OneRepublic(ワンリパブリック)は、2002年にアメリカ・コロラド州で結成されたポップロックバンドです。「Apologize」「Counting Stars」「I Ain’t Worried」——世代の違う3つの大ヒットを、20年近い間隔をまたいで放ち続けているという、かなり珍しいキャリアを歩んできました。
このバンドを特別にしているのが、フロントマンのライアン・テダーです。彼はビヨンセの「Halo」やアデルの「Rumour Has It」を書いた現代最高峰のヒットメーカーでもあり、他人のために書いた曲でグラミーの年間最優秀アルバム賞を3度も受け取っています。その人が、自分のバンドのために書いた曲がOneRepublicの楽曲だと考えると、聴こえ方が変わってくるはずです。
この記事では、2007年のデビュー作から2024年の『Artificial Paradise』、そして2026年の新曲までをアルバム順にたどり、代表曲を1曲ずつ紹介していきます。『トップガン マーヴェリック』や『怪獣8号』との関わり、そして毎年のように実現している来日公演まで押さえるので、これから聴き始める人の入口として使ってください。
OneRepublicとは?
マイスペース発、コロラドから出てきたバンド
始まりは1996年、コロラドスプリングスの高校でした。ライアン・テダーとザック・フィルキンスが出会い、バンドを組みます。いったん別々の道を歩んだあと、2002年にロサンゼルスで再合流して結成されたのがOneRepublicです。
コロンビア・レコードと契約するもののアルバムを出せないまま契約を切られ、バンドは活動の場をインターネットに移します。そこで彼らはマイスペースで「契約なしアーティスト」の1位にまで上りつめました。SNSがアーティストを発見する装置として機能し始めた最初期の、象徴的な成功例です。
その評判を聞きつけたのが、当時最強のプロデューサーだったティンバランドでした。彼のレーベルであるモズレー・ミュージック・グループ(インタースコープ傘下)と契約し、すでに存在していた「Apologize」にティンバランドがリミックスを施して世に出したところ、これが世界的な大ヒットになります。一度メジャーから捨てられたバンドが、別のメジャーから出した曲で頂点に立つという逆転劇でした。
以後、彼らは「バンドとしてのヒット」と「テダーの職業作家としての仕事」を両輪で回していきます。バンド活動を止めている期間もテダーが他人の曲を書き続けていたため、シーンから消えた時期がほとんどない——これが、彼らが20年以上ど真ん中に居続けられた理由です。2025年には18年ぶりにレーベルを移し、インタースコープからBMGへ移籍しました。
メンバー
| ボーカル / キーボード | Ryan Tedder(ライアン・テダー) |
| リードギター / ヴィオラ | Zach Filkins(ザック・フィルキンス) |
| ギター / キーボード | Drew Brown(ドリュー・ブラウン) |
| ベース / チェロ | Brent Kutzle(ブレント・カッツル) |
| ドラムス | Eddie Fisher(エディ・フィッシャー) |
| キーボード / ヴァイオリン | Brian Willett(ブライアン・ウィレット) |
作曲の中心は一貫してライアン・テダーで、多くの曲でベースのブレント・カッツルが共作者に名を連ねます。カッツルはチェロも弾き、フィルキンスはヴィオラ、ウィレットはヴァイオリンを担当——メンバーに弦楽器奏者が3人いるというのが、このバンドの音を決定づけている特徴です。
だからOneRepublicの曲は、ピアノとバンドの4リズムだけでは出せない厚みを持っています。打ち込みを大量に使う時期でも、どこかに生の弦が鳴っている。ポップスとして完璧に整えながら、機械だけの音にはならない——その配合が彼らの署名です。
数字で見るOneRepublic
バンドとしての総売上は全世界で1,600万枚以上とされています。ただし、このバンドの本当の規模はアルバム売上では測れません。「Counting Stars」はアメリカ国内で18回のプラチナ認定を受け、「I Ain’t Worried」も5回のプラチナ認定に到達しています。ストリーミング時代に最も強いタイプのバンドです。
「Counting Stars」のミュージックビデオは、バンドの作品として史上初めてYouTubeで10億回再生を突破しました(2015年11月)。当時これは、ソロアーティストの独壇場だった領域にバンドが初めて食い込んだ出来事として大きく報じられています。
グラミー賞については、バンド名義では「Apologize」などでノミネート止まりです。一方でライアン・テダー個人は、アデル『21』(2012年)、テイラー・スウィフト『1989』(2016年)、アデル『25』(2017年)の制作参加により、年間最優秀アルバム賞を3度受賞しています。バンドより先に作家として頂点に立ってしまったわけです。
OneRepublicのおすすめ曲・アルバム
1st Album『Dreaming Out Loud』(2007年)
2007年11月20日発売のデビューアルバム。全米14位、全英2位で、アメリカでは3回のプラチナ認定を受けました。プロデュースは主にグレッグ・ウェルズが担当し、ティンバランドがエグゼクティブ・プロデューサーとして名を連ねています。
ピアノを軸にした、真っ直ぐな歌もののロックです。当時はU2やコールドプレイ、ザ・フレイの延長線上にあると評され、独自性を疑う声もありました。ただ、いま聴くと「大きいメロディを臆せず大きく歌う」という彼らの資質はすでに完成していて、その後20年の仕事はすべてこの1枚の延長にあります。
『Apologize』
バンドを一躍世界的な存在にした曲。ティンバランドによるリミックス版が2007年に大ヒットし、全米ホット100で2位、トップ10に25週間とどまるという驚異的な記録を残しました。これは1999年のサンタナ「Smooth」以来の長さで、グラミーにもノミネートされています。
もともとバンドが自前で録っていた曲に、ティンバランドが打ち込みのビートを足したのがヒット版です。ピアノのループと「It’s too late to apologize」という一行の強さだけで成立してしまう曲で、アルバムには隠しトラックとしてリミックス版も収録されました。この記事で紹介しているミュージックビデオはバンド自身のバージョンです。
『Stop and Stare』
2008年のシングルで、全米12位。「Apologize」に続くヒットとなり、一発屋で終わらないことを証明した重要な曲です。日本でも2008年のサマーソニックで披露されました。
抑えたAメロから、サビでバンドが一斉に鳴り出す構成。歌われているのは、動くべきだと分かっているのに立ち止まってしまう感覚です。エレクトロニクスに頼らないバンドサウンドで勝負した曲でもあり、彼らの「生の演奏力」を知るならまずこの曲でしょう。
『Say (All I Need)』
アルバムの1曲目で、3枚目のシングルとしても発売されました。ヒットの規模では前の2曲に及びませんが、アルバムの世界観を決めているのはこの曲です。
ピアノのアルペジオと弦が絡み合いながら、じわじわと高まっていく作り。派手なフックで殴るのではなく、時間をかけて感情を積み上げていく手つきは、のちの「Secrets」や「Better Days」にもそのまま受け継がれています。デビュー作らしからぬ落ち着きのある1曲です。
収録曲
- Say (All I Need)
- Mercy
- Stop and Stare
- Apologize
- Goodbye, Apathy
- All Fall Down
- Tyrant
- Prodigal
- Won't Stop
- All We Are
- Someone to Save You
- Come Home
2nd Album『Waking Up』(2009年)
2009年11月17日にアメリカで発売された2作目。全米21位で、アメリカ国内では2回のプラチナ認定を受けています。プロデュースはライアン・テダーとブレント・カッツルが中心となり、初めてバンド主導で作られた作品です。
デビュー作の素直なピアノロックから一歩踏み出し、シンセとチェロを削ぎ落とした形で組み合わせるという実験が行われています。ダニー・エルフマンの映画音楽から着想を得たという管弦のアレンジも入り、音の景色が一気に広がりました。アルバムとしての評価では、いまも彼らの最高傑作に挙げる人が多い1枚です。
『All the Right Moves』
2009年発売の先行シングルで、全米18位。行進のようなドラムと、幾重にも重なるコーラスで押していく曲です。
「正しい手を打っているのに、誤った方向へ進んでいる」という皮肉が主題で、当時の音楽業界そのものを重ねて読まれることもありました。仮面舞踏会を舞台にしたミュージックビデオも豪華で、デビュー作の素朴さから大きく脱皮したことを印象づけた曲です。
『Secrets』
2010年のシングル。冒頭から鳴り続けるチェロのリフが強烈で、一度聴いたら忘れられない曲です。映画『魔法使いの弟子』やドイツ映画の主題歌など、映像作品での使用が非常に多く、曲名を知らないまま聴いたことがある人も多いはずです。
ブレント・カッツルのチェロが完全に主役を張っているという点で、このバンドの編成が武器になった代表例。「もう何も隠さない」と繰り返す歌詞の切迫感を、弦の反復がそのまま音にしています。OneRepublicらしさを1曲で説明するなら、「Counting Stars」ではなくこの曲を挙げる人も少なくありません。
『Good Life』
2010年発売のシングルで、全米8位。このアルバムから最も高く上がった曲で、彼らにとって「Apologize」以来のトップ10ヒットになりました。
口笛のフックと、ツアーで回った街の名前を並べていく歌詞。難しいことを何ひとつ言わず、ただ「いい人生だ」と歌い切る曲です。CMやテレビ番組での使用も多く、日本でもBGMとして耳にする機会が多い1曲でしょう。彼らの明るい側面を代表する曲です。
収録曲
- Made for You
- All the Right Moves
- Secrets
- Everybody Loves Me
- Missing Persons 1 & 2
- Good Life
- All This Time
- Fear
- Waking Up
- Marchin On
- Lullaby
- Sleep
3rd Album『Native』(2013年)
2013年3月発売の3作目。全米4位まで上がり、アメリカでは4回のプラチナ認定、全世界で500万枚以上を売り上げました。プロデュース陣にはベニー・ブランコやジェフ・バスカーといった当時最前線の名前が並んでいます。商業的にはこれが彼らの最高到達点です。
前作の実験を土台にしつつ、フォークやゴスペルの手触りを大胆に持ち込んだ作品です。手拍子、ストンプ、大合唱——2010年代前半に世界を席巻した「フェスで映えるポップロック」の代表例であり、その流れを決定づけた1枚でもあります。
『Counting Stars』
2013年6月14日発売、アルバムの1曲目にして彼ら最大の代表曲。全米ホット100で2位、チャートに68週間とどまり、トップ10には25週連続で居座りました。イギリスでは初の1位を獲得しています。
テダーがこの曲を書いたのは、ビヨンセのセッションで彼女を待っていた時間だったと語られています。「眠れない夜に羊ではなく星を数える」という着想と、フォーク的なリズムに乗った大合唱。ニューオーリンズで撮影されたミュージックビデオは、2015年11月にバンドの作品として初めてYouTubeで10億回再生を突破しました。この曲を知らずに2010年代の洋楽は語れません。
『If I Lose Myself』
2013年1月発売のシングルで、アルバムの2曲目。EDM全盛期のど真ん中で発表された、彼らとしては最もダンスミュージック寄りの曲です。
この曲を決定的にしたのが、スウェーデンのDJアレッソによるリミックスでした。原曲の切実なメロディが四つ打ちに乗ることで、クラブとロックフェスの両方で機能する曲になった好例です。テダーが早い段階からダンスシーンと接続していたことがよく分かります。
『Love Runs Out』
2014年4月発売、アルバムの再発盤に追加された曲です。13か国でトップ5に入り、「Counting Stars」に続くヒットになりました。
ピアノの連打とストンプするビートで一直線に突き進む、ライブ向きの曲。ゴスペル的なコーラスが被さっていく後半は、アリーナで鳴らすことを完全に前提にした作りです。この時期の彼らが「スタジアムのバンド」に切り替わったことを示す1曲でもあります。
収録曲
- Counting Stars
- If I Lose Myself
- Feel Again
- What You Wanted
- I Lived
- Light It Up
- Can't Stop
- Au Revoir
- Burning Bridges
- Something I Need
- Preacher
- Don't Look Down
4th Album『Oh My My』(2016年)
2016年10月7日発売、全米3位。前作『Native』の4位を上回り、2作連続でトップ5に初登場しました。プロデュースにはベニー・ブランコとノエル・ザンカネラが引き続き参加しています。
全16曲という彼ら最大のボリュームで、エレクトロポップやアリーナロック、カントリー、ファンク、ゴスペルまで詰め込んだ意欲作です。ゲストも豪華で、ピーター・ガブリエルが「A.I.」で、サンティゴールドが「NbHD」で、フランスのカシアスが表題曲で参加しています。ただし決定的なヒット曲が出ず、商業的には苦戦した1枚でもあります。
『Wherever I Go』
2016年5月発表の先行シングル。全米55位という結果でしたが、それまでのOneRepublic像をいちばん大きく裏切った曲です。
歪んだベースのリフと、抑制されたビート。壮大なコーラスで感動させる従来の手法をあえて封じ、ずっと張り詰めたまま終わります。ヒットしなかったからこそ、彼らが安全策を取るバンドではないことを示す証拠になっている曲です。
『Kids』
2016年8月発表の2ndシングル。アルバムのなかではもっとも彼ららしい、大きく開けたポップソングです。
子どもだった頃の無敵感を、大人になってから振り返る——という王道の主題を、ストンプするビートと合唱で運びます。「Love Runs Out」の系譜にある曲で、ライブでは定番の位置を占めるようになりました。このアルバムに1曲だけ触れるなら、まずここからで問題ありません。
収録曲
- Let's Hurt Tonight
- Future Looks Good
- Oh My My (feat. Cassius)
- Kids
- Dream
- Choke
- A.I. (feat. Peter Gabriel)
- Better
- Born
- Fingertips
- Human
- Lift Me Up
- NbHD (feat. Santigold)
- Wherever I Go
- All These Things
- Heaven
5th Album『Human』(2021年)
2021年8月27日発売、全米11位。前作から5年近く空いた作品で、その理由はシンプルに「完成しなかった」からでした。当初は2019年末、次いで2020年5月と発売予定が繰り返し延期され、最後はパンデミックが重なります。
結果として、収録曲の多くが2019年から2021年にかけて単発で発表されたシングルの寄せ集めという形になりました。アルバムとしての流れは前作までに比べて弱いものの、1曲ずつの完成度は非常に高い。テダーがこの時期にどれだけヒットの作法を突き詰めていたかがよく分かる1枚です。
『Rescue Me』
2019年5月発表のシングル。長い沈黙を破って発表された曲で、アルバムより2年以上早く世に出ています。
跳ねるビートと、サビでの畳みかけるようなメロディ。「誰か助けてくれ」という直球のフレーズを、暗くならずに歌い切ります。ポップスとしての作りが極めて緻密で、テダーが他人に提供している曲と同じ精度でバンドの曲を作っていることがよく分かる1曲です。
『Better Days』
2020年3月、パンデミックの真っただ中に急遽発表された曲です。制作から発表までが異例の速さで、収益の一部が支援に充てられました。
手拍子とアコースティックギターだけで始まり、「もっといい日が来る」と繰り返すだけの、驚くほど素朴な曲です。しかし2020年春という時期に、この言葉をこの規模で届けられたバンドは多くありません。技巧を捨てて機能に徹した曲として、彼らのキャリアのなかでも特別な位置にあります。
収録曲
- Run
- Distance
- Someday
- Didn't I
- Rescue Me
- Savior
- Take Care of You
- Forgot About You
- Somebody to Love
- Wanted
- Take It Out on Me
- Better Days
- Lose Somebody
6th Album『Artificial Paradise』(2024年)
2024年7月12日発売の最新アルバム。インタースコープとの契約最後の作品で、これを最後にバンドはBMGへ移籍しました。2024年12月にはアコースティック版などを加えたスーパー・デラックス盤も発売されています。
特徴的なのは、2021年から2024年にかけて発表した8つのシングルを回収する形で編まれていることです。映画の主題歌、ゲームのテーマ曲、アニメのエンディング、サッカー欧州選手権の公式ソング——バンドがこの数年、いかに世界中のタイアップの中心にいたかが、そのまま1枚のアルバムになっています。
『I Ain’t Worried』
2022年5月13日発表、映画『トップガン マーヴェリック』の挿入歌。全米ホット100で6位、ベルギーやニュージーランドなどで1位を獲得し、アメリカでは5回のプラチナ認定に到達しました。「Counting Stars」以来の世界的大ヒットです。
使われたのは、マーヴェリックと訓練生たちがビーチでアメフトに興じる場面。制作の裏話が面白く、トム・クルーズは30曲近くを却下していたと言われています。テダーは映像を見せてもらえなかったため、Zoom画面をスマホで撮影して自分で曲と合わせた動画を作り、それを送ったところ即座にOKが出たそうです。口笛のフックだけで世界を獲った曲です。
『Nobody』
2024年4月12日発表。テレビアニメ『怪獣8号』のエンディングテーマとして書き下ろされた曲で、日本での知名度を一気に押し上げました。アルバムではデラックス盤に収録されています。
「誰でもない自分が、それでも立ち上がる」という内容が、32歳で怪獣退治を目指す主人公の物語と重なる作りになっています。海外のトップアーティストが日本のアニメに書き下ろすという座組は当時まだ珍しく、この曲がその流れを広げた1曲でもありました。
『West Coast』
2021年に発表され、アルバムに収録された曲。アコースティックギターのリフと手拍子で始まる、開放的なロードソングです。
西海岸へ向かう道すがら、という設定そのままの明るさで、フリートウッド・マックのような70年代アメリカン・ロックの匂いがあります。打ち込み主体の曲が並ぶアルバムのなかで、バンドとして演奏している手触りがいちばん濃い1曲です。
収録曲
- Artificial Paradise
- Hurt
- Sink or Swim
- Last Holiday
- I Ain't Worried
- Red Light Green Light
- Serotonin
- Singapore
- Room for You
- Stargazing
- Entr'acte
- West Coast
- Runaway
- Sunshine
BMG移籍と、7作目に向けた新曲
2025年7月、OneRepublicは18年在籍したインタースコープを離れ、BMGと新たな契約を結びました。デビュー以来初めてのレーベル移籍です。以降に発表された曲は、いずれも次の7作目に収録される予定とされています。
『Need Your Love』
2026年4月発表、BMG移籍後の本格的な第1弾シングルです。ライアン・テダーがデヴィッド・クシュナーらと共作し、自身でプロデュースしました。全米のアダルト・ポップ系ラジオチャートで上位に入っています。
「物質的な豊かさより愛のほうが大事だ」という、彼らにしてはずいぶん直球の主題です。テダーは「1年かけて、驚きのある曲を探していた」と語っており、移籍が創作の刺激になったとも述べています。2025年のツアーで先行して披露されていた曲でもあります。
『Pay That Toll』
2026年8月28日発表の最新シングル。テダーとブレント・カッツルらの共作で、こちらも7作目に収録される予定です。2026年6月にはスウェーデンのDJアレッソとの共作「In Your Eyes」も発表されており、新体制での動きは活発です。
「その通行料を払え」というタイトルどおり、何かを手に入れるには対価がいる、という主題。デビューから20年近く経っても、大きなサビで押し切るという彼らの方法論はまったく変わっていません。次のアルバムがどんな形になるかを占ううえで、注目しておきたい曲です。
ライアン・テダーという作曲家
OneRepublicを語るうえで避けて通れないのが、ライアン・テダーの職業作家としての仕事です。彼が他のアーティストに書いた曲を並べると、2000年代後半以降のポップスの相当な部分が彼の手を通っていることが分かります。
代表的なところでは、レオナ・ルイス「Bleeding Love」、ビヨンセ「Halo」と「XO」、アデル「Rumour Has It」、エド・シーラン「Happier」など。テイラー・スウィフト『1989』やジョナス・ブラザーズ、マルーン5、アリアナ・グランデ、サム・スミスまで、リストは際限なく続きます。
その結果として、彼はグラミーの年間最優秀アルバム賞を3度受賞しています。アデル『21』(2012年)、テイラー・スウィフト『1989』(2016年)、アデル『25』(2017年)。自分のバンドではまだ受賞していない賞を、他人の作品で3度獲っているというねじれた状況です。
近年はアジアのポップスにも仕事を広げており、BLACKPINKやTOMORROW X TOGETHERといったK-POPグループへの提供、そして日本のグループ&TEAMの「Dropkick」のプロデュースも手がけています。「Nobody」でアニメの主題歌を書いたことと合わせて、彼のアジアとの距離はここ数年で急速に縮まりました。
この二重生活が、OneRepublicというバンドの性格を決めています。彼らの曲がどれも「よくできすぎている」と感じるとしたら、それは他人のヒット曲を量産している人間が、同じ技術を自分のバンドに使っているからです。
日本とOneRepublic
初来日は2008年8月9日、サマーソニック東京のマリンステージでした。「Apologize」のヒットの直後で、デビューアルバム1枚を携えての出演です。
その後しばらく間が空きますが、2024年に一気に距離が縮まります。アニメ『怪獣8号』のエンディングテーマ「Nobody」を書き下ろしたこの年、彼らはサマーソニック2024に出演(東京公演は8月17日、ZOZOマリンスタジアム)。さらにフェスとは別に、8月15日には豊洲PITで「SUMMER SONIC EXTRA」としてクラブ規模の単独公演を行い、こちらは即完売となりました。
翌2025年1月には『Artificial Paradise』のツアーで来日。そして2026年2月、アジアツアー「From Asia, With Love」の一環として、2月25日にKアリーナ横浜、2月27日にGLION ARENA KOBEで公演を行いました。3年連続の来日という頻度は、海外のトップバンドとしてはかなり異例です。
この2026年公演では、スペシャルゲストに日本のグループ&TEAMが起用されました。ライアン・テダーが彼らの「Dropkick」をプロデュースした縁によるものです。アニメ主題歌、日本のグループへの楽曲提供、そして毎年の来日——OneRepublicはいま、海外アーティストのなかでもとりわけ日本との結びつきが強いバンドになっています。
まとめ
OneRepublic(ワンリパブリック)は、レーベルに切られてマイスペースから這い上がったバンドが、20年近くヒットチャートのど真ん中に居続けているという、稀有な成功例です。「Apologize」で2000年代を、「Counting Stars」で2010年代を、「I Ain’t Worried」で2020年代を獲る——10年ごとに時代の音を更新できるポップバンドは、そう多くありません。
最初の1枚に迷ったら、『Native』から入ってください。「Counting Stars」「If I Lose Myself」「Love Runs Out」と、彼らの代表曲が集中しています。そこで手応えがあれば、次はアルバムとしての完成度が高い『Waking Up』へ。チェロが主役の「Secrets」に出会えれば、このバンドの見方が変わるはずです。最新の姿を知りたいなら『Artificial Paradise』を。
曲単位で試すなら、まずは「Counting Stars」「Apologize」「Secrets」「I Ain’t Worried」の4曲。ここに「Nobody」を足せば、彼らの20年と日本との関係までまとめて把握できます。ライアン・テダーが他人に書いた曲まで追いかけ始めると、これが底なし沼です。まずは自分のバンドのために書いた曲から、どうぞ。


