Olivia Rodrigo(オリヴィア・ロドリゴ)は、アメリカ・カリフォルニア州出身のシンガーソングライターです。2021年のデビューシングル「drivers license」が世界中のチャートを一気に制圧し、その年のうちにグラミー賞の最優秀新人を獲得しました。ディズニー作品の子役から出発して、2020年代のポップスの中心にまで来てしまった人です。
武器は、10代の感情をごまかさずに言葉にする書き方です。失恋、嫉妬、自己否定、怒り。それを日記のような具体性で書き、静かなバラードとポップパンクの間を行き来しながら鳴らします。ピアノ1台で泣かせる曲と、ギターをかき鳴らして叫ぶ曲が、同じアルバムに並んで違和感がないのが強みです。
この記事では、オリヴィア・ロドリゴがどんなアーティストなのかを整理したうえで、3枚のアルバムを発表順にたどりながら、それぞれの代表曲を1曲ずつ紹介していきます。「drivers license」しか知らない、という方にこそ読んでほしい内容です。
Olivia Rodrigo(オリヴィア・ロドリゴ)とは?
ディズニーの子役から、世界を止めた1曲へ
オリヴィア・ロドリゴは2003年2月20日、カリフォルニア州マリエッタ生まれ。父方がフィリピン系で、母方はドイツ系とアイルランド系。自身をフィリピン系アメリカ人だと語っています。
キャリアは俳優として始まりました。ディズニー・チャンネルのドラマ『Bizaardvark』(2016〜2019年)でペイジ・オルヴェラ役を演じ、続いてDisney+の『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』(2019〜2022年)でニニ・サラザール・ロバーツ役を務めます。この2作目で、彼女は自分で書いた曲をドラマの中で歌いました。
2020年にGeffen Recordsと契約し、2021年1月8日にデビューシングル「drivers license」を発表。ここからの展開は、ポップスの歴史でもなかなか例がありません。TikTokでの拡散と、曲の背景をめぐる詮索が重なって、リリースから数日でSpotifyの記録を次々に書き換え、Billboard Hot 100では8週にわたって1位を占め続けました。
同年5月のデビューアルバム『SOUR』もそのまま全米1位。2022年のグラミー賞では、最優秀新人、最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバム、最優秀ポップ・ソロ・パフォーマンスの3部門を受賞しています。以降は2023年の『GUTS』、2026年の『you seem pretty sad for a girl so in love』と、出したアルバムはすべて全米1位。俳優出身という出自が、もう話題にならないところまで来ました。
プロフィール
| 本名 | オリヴィア・イザベル・ロドリゴ |
| 生年月日 | 2003年2月20日 |
| 出身地 | アメリカ・カリフォルニア州マリエッタ |
| ジャンル | ポップ/ポップパンク/オルタナティヴ |
| レーベル | Geffen Records(2020年契約) |
| デビュー | 2021年1月(シングル「drivers license」) |
| 俳優としての代表作 | 『Bizaardvark』『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』 |
| 主な受賞 | グラミー賞3部門(2022年) |
ほぼすべての楽曲を、プロデューサーのダン・ナイグロと共作しています。1作目から3作目まで同じ相棒と作り続けているという点も、彼女の作品の一貫性を支えている部分です。
数字で見るOlivia Rodrigo
デビュー曲「drivers license」は、Spotifyで非クリスマス曲としての1日あたり最多ストリーム記録を更新し(2021年1月11日に1,500万回超、翌日には1,700万回超)、1週間の記録も6,500万回超で塗り替えました。Hot 100では8週連続1位。TikTokのハッシュタグは1週間で8億8,850万回の再生に達しています。
デビューアルバム『SOUR』は初週29万5,000ユニットでBillboard 200の1位に入り、通算5週1位。デビューアルバムとしてはBillboard 200のトップ10に52週とどまるという最長記録も作りました。2023年の『GUTS』は初週30万2,000ユニット、2026年の『you seem pretty sad for a girl so in love』は初週48万5,000ユニットで、いずれも1位デビューです。
Olivia Rodrigoのおすすめ曲・アルバム
ここからは、ディズニー時代の1曲から最新作まで発表順にたどりながら、それぞれの代表曲を1曲ずつ取り上げていきます。
デビュー前|ドラマから生まれた『All I Want』
メジャーデビューより前に、彼女の名前を音楽ファンに知らせた曲があります。Disney+のドラマ『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』のために本人が書き、劇中で歌った「All I Want」です。
『All I Want』
2019年11月、ドラマのサウンドトラックとして発表された曲です。ドラマの枠を越えてストリーミングで広まり、彼女が「歌える俳優」ではなく「曲を書く人」だと知られるきっかけになりました。
ピアノとギターだけで進む素朴な曲ですが、「望んだものは何も手に入らない」という一点を最後まで押し通す書き方は、のちの『SOUR』とすでに同じです。この時点で16歳だったことを考えると、書き手としての骨格は最初から出来ていたことが分かります。
1st Album『SOUR』(2021年)
2021年5月21日リリースのデビューアルバムです。初週29万5,000ユニットでBillboard 200の1位に入り、通算5週にわたって首位を守りました。全英アルバムチャートでも1位で、こちらも非連続で5週1位。2022年のグラミー賞では最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバムを受賞しています。
内容は、ひとつの失恋を軸にした11曲です。ピアノのバラード、ポップパンク、ローファイな小曲が並び、10代の感情の振れ幅がそのまま曲の振れ幅になっています。恨みも自己嫌悪も加工せずに出してしまう率直さが、同世代のリスナーに刺さりました。
『drivers license』
2021年1月8日リリースのデビューシングル。Hot 100で8週連続1位を記録し、2022年のグラミー賞で最優秀ポップ・ソロ・パフォーマンスを受賞しました。同賞ではレコード・オブ・ザ・イヤーと楽曲賞にもノミネートされています。
免許を取った日に、もういない相手の家の前を車で通る——という状況設定だけで最後まで持っていく曲です。静かなピアノから始まり、途中で多重コーラスが押し寄せてくる構成が印象的で、ここで一気に彼女の書き手としての評価が決まりました。
『deja vu』
2021年4月1日リリースの2枚目のシングルで、Hot 100では3位。同年7月、テイラー・スウィフトの「Cruel Summer」を引用しているとして、テイラー・スウィフト、ジャック・アントノフ、セイント・ヴィンセントが作詞作曲クレジットに追加されました。
別れた相手が新しい恋人と、自分とやったことをそのまま繰り返している——という嫌な想像を並べていく曲です。攻撃的な言葉を淡いシンセの上に乗せるという配合で、『SOUR』のなかではもっとも手数の多い曲になっています。
『good 4 u』
2021年5月14日リリース。Hot 100に1位で初登場しました。同年8月、パラモアの「Misery Business」との類似を理由に、ヘイリー・ウィリアムスとジョシュ・ファロがクレジットに追加されています。
歪んだギターと叩きつけるドラムで進むポップパンクで、「よかったね、あなたは」という皮肉を全力で歌います。2000年代のポップパンクを2020年代に呼び戻した曲として語られることが多く、彼女の激しい側を代表する1曲です。
『traitor』
2021年8月10日にシングルカットされ、Hot 100で9位。アルバム発表から3か月後にリリースされた、いわゆる後追いのヒット曲です。
ゆっくりしたテンポで「裏切り者」と静かに責め続ける曲。声を張らずに感情を積み上げていく歌い方で、激しい曲よりこちらを推すファンも多い1曲です。
収録曲
- brutal
- traitor
- drivers license
- 1 step forward, 3 steps back
- deja vu
- good 4 u
- enough for you
- happier
- jealousy, jealousy
- favorite crime
- hope ur ok
2nd Album『GUTS』(2023年)
2023年9月8日リリースの2作目です。初週30万2,000ユニット(うちCDやレコードなどの実売が15万枚)でBillboard 200の1位、全英でも1位。2024年のグラミー賞では、アルバム・オブ・ザ・イヤーと最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバムにノミネートされました。
『SOUR』が失恋の記録だったのに対して、『GUTS』のテーマは「若さそのものの気まずさ」です。20歳前後の自意識、他人と比べてしまう癖、失敗の反省。デビュー作より音は荒く、ギターの比重が増えていて、笑える曲と痛い曲が交互に来る構成になっています。
『vampire』
2023年6月30日リリースの先行シングルで、Hot 100の1位を獲得しました。アルバムの方向性を示した曲です。
ピアノのバラードとして始まり、途中からテンポが上がって最後には叩きつけるロックになる、という構成が聴きどころ。年上の相手に利用されたという内容を「吸血鬼」に喩えて突き放していきます。
『bad idea right?』
2023年8月11日リリースの2枚目のシングル。Hot 100のトップ10に入りました。
「絶対よくないと分かっているのに元恋人に会いに行く」という状況を、投げやりな語りとガレージロック風の演奏で描く曲です。深刻にならずに自分をからかう書き方で、『GUTS』の軽い側を代表する曲になっています。
『get him back!』
2023年9月15日リリース。こちらもHot 100のトップ10に入っています。
「よりを戻したい」と「復讐したい」を同じ英語で言い分ける言葉遊びが軸の曲です。チアリーダーの掛け声のようなコーラスが入り、ライブで最も盛り上がる曲のひとつになりました。
収録曲
- all-american bitch
- bad idea right?
- vampire
- lacy
- ballad of a homeschooled girl
- making the bed
- logical
- get him back!
- love is embarrassing
- the grudge
- pretty isn't pretty
- teenage dream
『GUTS (spilled)』(2024年)
2024年3月22日に発表されたデラックス版です。『GUTS』の12曲に「obsessed」「girl i’ve always been」「scared of my guitar」「stranger」「so american」の5曲が追加されました。
追加曲はいずれも本編の制作時に書かれたもので、余り物という感じがしません。とくに「obsessed」と「so american」はツアーの定番になり、デラックス版から出た曲としては異例の扱いを受けています。
『obsessed』
2024年、デラックス版に合わせてシングルとして発表された曲です。もともと『GUTS』の制作時に書かれ、ライブでは先行して披露されていました。
恋人の元カノのことが気になって仕方ない、という状況をポップパンクで押していく曲。嫉妬をここまで具体的に、しかも笑いながら書けるところが彼女の持ち味です。
追加収録曲(spilled)
- obsessed
- girl i've always been
- scared of my guitar
- stranger
- so american
映画のための書き下ろし『can’t catch me now』
アルバムの流れとは別に、映画のために書かれた曲も1曲だけ紹介します。
『can’t catch me now』
2023年、映画『ハンガー・ゲーム0』(The Hunger Games: The Ballad of Songbirds & Snakes)のサウンドトラックのために書かれた曲です。
アコースティックギターとストリングスで進むフォーク寄りの曲で、彼女のアルバムには入っていない質感を持っています。物語の登場人物の視点で書かれているため、自分の失恋を書くいつもの姿とは違う一面が出ています。
3rd Album『you seem pretty sad for a girl so in love』(2026年)
2026年6月12日リリースの最新作です。初週48万5,000ユニットでBillboard 200の1位、全英でも10万2,814ユニットで1位。20か国以上のチャートで首位に立ちました。プロデュースは引き続きダン・ナイグロです。
音の面では大きく舵を切りました。ドリームポップ、ニューウェイヴ、シンセポップといった1980年代のオルタナティヴを参照した質感で、『GUTS』のガレージロック的な荒さとは別方向です。タイトルの通り、「こんなに愛しているのに、ずいぶん悲しそうだね」という矛盾が全体のテーマになっていて、アルバムは「Girl So in Love」の側と「You Seem Pretty Sad」の側に分けて構成されています。
もう一点、大きな話題になったのが「what’s wrong with me」への客演です。ここで歌っているのはザ・キュアーのロバート・スミス。80年代の参照を、実際に本人を呼ぶところまで持っていきました。
『drop dead』
2026年4月17日リリースの先行シングル。Hot 100に1位で初登場しました。3年ぶりの新曲でした。
シンセのアルペジオに乗せて突き放すような言葉を並べる曲で、新しい方向性を最初に提示した1曲です。怒りの表現の仕方が、ギターで叫んでいた『GUTS』の頃とは明らかに変わっています。
『the cure』
2026年5月22日リリースの2枚目のシングルで、Hot 100では5位。
曲名がそのままザ・キュアーの名前になっているのが分かりやすい看板で、けだるいギターとリバーブの効いた音作りが80年代のオルタナティヴをまっすぐ向いています。アルバムの中心に置かれた曲です。
『stupid song』
アルバムと同日の2026年6月12日に発表され、Hot 100に3位で初登場しました。
「こんなばかな歌」と自分で言いながら、結局その人のことを歌ってしまうという曲。自分の書く行為そのものを題材にするという、3作目らしい距離の取り方が出ています。
収録曲
- drop dead
- stupid song
- honeybee
- maggots for brains
- u + me = <3
- my way
- purple
- the cure
- begged
- what's wrong with me (featuring Robert Smith)
- less
- expectations
- cigarette smoke
日本との関わり|2024年の初来日公演
オリヴィア・ロドリゴの初来日は、デビューから3年以上経った2024年でした。2枚目のアルバムを携えた「GUTS World Tour」の日本公演として、2024年9月27日に東京・有明アリーナで一夜限りの公演が発表され、反響の大きさから翌28日の追加公演が組まれています。
この「GUTS World Tour」は、2024年2月23日から2025年7月1日まで5大陸で101公演を回る規模のツアーでした。興行収入は2億900万ドルを超え、チケットは160万枚以上が売れています。日本公演はそのごく一部でしたが、彼女のライブが日本で見られるようになった最初の機会でした。
3作目に伴うツアー「The Unraveled Tour」は、2026年9月25日から2027年5月10日にかけて北米とヨーロッパで86公演が組まれています。日本を含むアジアの日程は、この北米・欧州の日程には含まれていません。
作詞クレジットをめぐる議論
彼女を語るときに避けて通れないのが、デビューアルバムをめぐる作詞作曲クレジットの追加です。2021年7月、「deja vu」にテイラー・スウィフト、ジャック・アントノフ、セイント・ヴィンセントの3名が追加されました。理由は「Cruel Summer」の一部を引用していたためです。同じアルバムの「1 step forward, 3 steps back」も、テイラー・スウィフトの「New Year’s Day」をサンプリングしており、こちらは当初からクレジットされていました。
もうひとつが「good 4 u」です。2021年8月、パラモアの「Misery Business」との類似を理由に、ヘイリー・ウィリアムスとジョシュ・ファロがクレジットに追加されました。報道では印税の50%が両者に渡ったとされ、その額は70万ドルから120万ドルと見積もられています。
この件は「影響とは何か」「どこからが引用か」という議論を呼び、ポップスの著作権のあり方をめぐる代表的な事例として何度も引かれるようになりました。一方で、彼女の楽曲の魅力が引用部分にあるわけではないことも、その後の2枚のアルバムがはっきり示しています。過去の音楽への参照を隠さないのは彼女の作風そのもので、3作目でザ・キュアーのロバート・スミスを迎えたのも、その延長線上にある選択です。
まとめ|まずはこの3曲から
オリヴィア・ロドリゴは、10代の生々しい感情を書くところから始めて、そのまま20代の書き手として作品を作り替え続けているアーティストです。デビュー作の失恋、2作目の気まずさ、3作目の愛と悲しみの矛盾。3枚のアルバムがそれぞれ違う年齢の記録になっている、という点がいちばんの面白さだといえます。
これから聴き始めるなら、まずは「drivers license」「good 4 u」「vampire」の3曲から。静かなバラード、ポップパンク、その両方を1曲に詰めた曲、という彼女の3つの型がそれぞれつかめます。ここが引っかかったなら「traitor」「drop dead」まで進んでみてください。
アルバムを1枚選ぶなら、まずは『SOUR』。彼女がどこから来たのかが11曲で分かります。勢いのある演奏が好みなら『GUTS』、80年代のオルタナティヴが好きな人には最新作の『you seem pretty sad for a girl so in love』が向いています。


