映画の主題歌には、その作品を観終わったあとも耳から離れない特別な力があります。今回は、映画の主題歌・挿入歌として生まれたおすすめの洋楽を、時代順に40曲まとめました。
『タイタニック』『トップガン』『ボディガード』のような不朽の定番から、『ブラックパンサー』『バービー』のような近年の話題作、そしてディズニー映画の名曲まで。POP、ROCK、R&B、HIP HOPとジャンルを問わず幅広く選びました。
映画の主題歌は、単なるタイアップではありません。アカデミー賞には「歌曲賞(Best Original Song)」という部門があり、その年で最も優れた映画のために書かれた1曲が選ばれます。ここで紹介する曲の多くは、その受賞作・ノミネート作です。
1曲ずつ動画を載せているので、上から流していけばそのまま映画音楽のプレイリストとして使えます。曲名の下に映画のタイトルと公開年を書いているので、気になった作品から聴いてみてください。
映画の主題歌のおすすめ洋楽【70〜90年代の定番】
まずは、映画音楽といえばこれ、という不動の定番から。この時代は「映画のサウンドトラックがアルバムとして大ヒットする」という文化が確立した時期で、主題歌そのものがチャートの主役になっていました。
Bee Gees – Stayin’ Alive
映画『サタデー・ナイト・フィーバー』(1977年)
ディスコブームを象徴する1曲。1978年2月にビルボードのシングルチャートで1位を獲得し、4週にわたって首位を守りました。ビージーズは当時、全米1位を6曲連続で記録しており、これはビートルズと並ぶ記録でした。
映画の冒頭、ジョン・トラボルタがニューヨークの街を歩くオープニングで流れるのがこの曲です。あの歩き方とビートの組み合わせは、映画音楽の使い方としてあまりに完璧で、その後何十年も引用され続けています。アメリカ映画の名曲を選ぶAFIのランキングでは9位に選ばれました。
Survivor – Eye of the Tiger
映画『ロッキー3』(1982年)
トレーニングシーンといえばこの曲、というくらい定着した鉄板ナンバー。全米1位を6週間、全英1位を4週間記録し、1982年で2番目に売れたシングルになりました。
面白いのは成立の経緯です。監督兼主演のシルベスター・スタローンはもともとクイーンの『Another One Bites the Dust』を使いたかったのですが、許可が下りませんでした。そこで新曲を依頼されたサヴァイヴァーは、映画のセリフから歌詞とタイトルを引っ張り、ボクシングのパンチに合わせてコードが変わるリフを作ったそうです。アカデミー歌曲賞にノミネートされ、グラミー賞では最優秀ロック・パフォーマンス賞を受賞しました。
Irene Cara – Flashdance… What a Feeling
映画『フラッシュダンス』(1983年)
全米1位を6週間獲得し、アカデミー歌曲賞とゴールデングローブ賞を受賞。歌ったアイリーン・キャラ自身もグラミー賞の最優秀女性ポップ・ボーカル・パフォーマンス賞を手にしました。
作曲はジョルジオ・モロダー。アイリーン・キャラと作詞のキース・フォーシーは、主人公がオーディションで踊るラストシーンを先に見せられ、そこから歌詞を書いたといいます。「踊りたくなる衝動」をそのまま言葉にしたことで、映画を離れても通用する曲になりました。2023年にはアメリカ議会図書館の国立録音登録簿に選ばれています。
Ray Parker Jr. – Ghostbusters
映画『ゴーストバスターズ』(1984年)
「Who you gonna call?」の掛け声で誰もが答えられる、映画主題歌の中でも最も有名なフレーズを持つ曲。1984年8月に全米1位を獲得し、3週にわたって首位を守りました。レイ・パーカーJr.にとって唯一の全米1位です。
アカデミー歌曲賞にノミネートされましたが、スティーヴィー・ワンダーの『I Just Called to Say I Love You』に敗れています。なお、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの『I Want a New Drug』に似ているとして訴訟が起こされ、和解に至ったという逸話も残っています。
Simple Minds – Don’t You (Forget About Me)
映画『ブレックファスト・クラブ』(1985年)
80年代の青春映画を代表するアンセム。全米・カナダで1位を獲得し、スコットランド出身のシンプル・マインズにとって北米最大のヒットになりました。全英では7位です。
実はこの曲、バンドの自作ではありません。プロデューサーのキース・フォーシーとギタリストのスティーヴ・シフが映画のために書いた曲で、シンプル・マインズは「自分たちの曲を録りたい」と最初は断っています。他の何組かにも断られた末に引き受けたのが、結果的にバンド最大の代表曲になりました。土曜日の補習に集められた高校生たちの物語と、この曲の「僕を忘れないで」という一言が完全に噛み合った例です。
Berlin – Take My Breath Away
映画『トップガン』(1986年)
アカデミー歌曲賞とゴールデングローブ賞を受賞した、80年代を代表するラブバラード。作曲はジョルジオ・モロダー、作詞はトム・ウィットロックというコンビです。
マーヴェリックとチャーリーのロマンスシーンで流れる、あの浮遊感のあるシンセサウンド。ベルリンはニューウェイヴのバンドでしたが、この1曲でまったく別の場所まで連れて行かれました。『トップガン』のサウンドトラックは1986年で最も売れたアルバムで、80年代のあの過剰で劇的なポップサウンドを今でも一枚で説明してくれる作品です。
Kenny Loggins – Danger Zone
映画『トップガン』(1986年)
同じ『トップガン』から、こちらは戦闘機が飛び立つ側の曲。作曲はやはりジョルジオ・モロダー、作詞はトム・ウィットロック。前曲とセットで、1本の映画がいかに音楽で記憶されるかを示しています。
特筆すべきは、2022年の続編『トップガン マーヴェリック』でも同じ音源がそのまま使われたことです。36年後の映画で、当時の録音がまったく古びずに機能する。主題歌が作品の一部として完全に定着した、珍しい例といえます。
Bill Medley & Jennifer Warnes – (I’ve Had) The Time of My Life
映画『ダーティ・ダンシング』(1987年)
アカデミー歌曲賞、ゴールデングローブ賞、グラミー賞(最優秀ポップ・パフォーマンス デュオ/グループ)を総取りした1曲。映画音楽としては最高の勲章を並べた曲です。
クライマックスのダンスシーンで流れる曲で、男女のデュエットが少しずつ盛り上がっていく構成が、そのまま映画の展開と重なります。ライチャス・ブラザーズのビル・メドレーと、シンガーソングライターのジェニファー・ウォーンズという組み合わせも絶妙。結婚式やパーティで今も定番として使われ続けています。
Bryan Adams – (Everything I Do) I Do It for You
映画『ロビン・フッド』(1991年)
全英シングルチャートで16週連続1位という、いまだに破られていない記録を持つパワーバラード。少なくとも19カ国で1位を獲得し、世界で1,500万枚以上を売り上げました。
ケヴィン・コスナー主演の『ロビン・フッド』のために書かれた曲で、ブライアン・アダムス自身のアルバム『Waking Up the Neighbours』にも収録されています。共作者にはマイケル・ケイメン(映画の作曲家)とマット・ラング。カバーされた回数も膨大で、「洋楽のバラードといえば」という質問に対する定番の答えのひとつになりました。
Whitney Houston – I Will Always Love You
映画『ボディガード』(1992年)
当時の記録を塗り替える14週連続の全米1位。世界34カ国のチャートで1位を獲得し、2,400万枚以上を売り上げて、女性ソロアーティストとして史上最も売れたシングルになりました。
原曲は1973年にドリー・パートンが書いて歌ったカントリーソング。それをホイットニー・ヒューストンがポップバラードとして歌い直し、まったく違う次元の曲に生まれ変わらせました。グラミー賞では最優秀レコード賞を受賞し、サウンドトラック自体も最優秀アルバム賞を獲得。「映画主題歌が音楽史を動かした」最大級の例です。
Coolio – Gangsta’s Paradise
映画『デンジャラス・マインド』(1995年)
1995年のビルボードで最も売れたシングル。イギリスでは、ラップのシングルとして史上初めて初登場1位を記録しました。グラミー賞では最優秀ラップ・ソロ・パフォーマンス賞を受賞しています。
スティーヴィー・ワンダーの1976年の曲『Pastime Paradise』を引用したトラックに、ゲトーの現実を突きつける歌詞を乗せた1曲。ミュージックビデオは映画をモチーフに、後に名監督となるアントワン・フークアが監督し、主演のミシェル・ファイファーも出演しています。ヒップホップが映画を通じて世界の主流に届いた瞬間でした。
Seal – Kiss from a Rose
映画『バットマン フォーエヴァー』(1995年)
グラミー賞で最優秀レコード賞と最優秀楽曲賞をダブル受賞した名曲。1996年のグラミーでは最優秀男性ポップ・ボーカル・パフォーマンス賞も獲得しています。
もともとは1994年のアルバム『Seal』に収録されていた曲で、映画『ネバーエンディング・ストーリー3』でも使われていました。それが翌1995年に『バットマン フォーエヴァー』のサウンドトラックとして再リリースされ、全米・オーストラリアで1位に到達。アルバム収録曲が映画のタイアップで生き返った、典型的なパターンです。ワルツのリズムに乗る低く重い歌声が、この曲だけの空気を作っています。
Celine Dion – My Heart Will Go On
映画『タイタニック』(1997年)
映画主題歌の代名詞ともいえる1曲。25カ国以上で1位を獲得し、1998年で世界最も売れたシングルに。推定1,800万枚以上を売り上げ、女性アーティストのシングルとしては史上2番目の記録です。
作曲はジェームズ・ホーナー。もともと映画のためのインストゥルメンタルのモチーフとして書かれたもので、監督のジェームズ・キャメロンは当初「ポップバラードを入れる」ことに反対だったといいます。デモを聴いて認めたという経緯があり、あの判断が映画音楽史を変えました。アカデミー歌曲賞に加え、グラミー賞では最優秀レコード賞と最優秀楽曲賞を受賞しています。
Aerosmith – I Don’t Want to Miss a Thing
映画『アルマゲドン』(1998年)
初登場で全米1位を獲得し、4週にわたって首位を守った曲。結成から30年近く活動していたエアロスミスにとって、これが最初で唯一の全米1位シングルでした。
作曲はヒットメイカーのダイアン・ウォーレン。当初は「セリーヌ・ディオンのような歌手が歌う曲」として書かれ、U2にも打診されていたそうです。エアロスミス案が出たのは、ボーカルのスティーヴン・タイラーの娘リヴ・タイラーが映画のヒロインに決まったから。アカデミー歌曲賞にはノミネートされましたが、『プリンス・オブ・エジプト』の『When You Believe』に敗れています。
2000年代の映画主題歌のおすすめ洋楽
2000年代に入ると、主題歌の役割が変わってきます。バラード一辺倒ではなく、ヒップホップやロックがそのまま作品の主題を語る曲として使われるようになりました。
Smash Mouth – All Star
映画『シュレック』(2001年)
厳密には映画のために書かれた曲ではありません。1999年のアルバム『Astro Lounge』からのシングルで、全米トップ10入りを果たしたヒット曲です。それが2001年の『シュレック』オープニングに使われたことで、完全に「あの映画の曲」として記憶されるようになりました。
作者のグレッグ・キャンプは「はみ出し者のためのアンセム」を狙って書いたといいます。2010年代にはインターネットミームとして再びブレイクし、リリースから20年以上を経ても新しい世代に届き続けている、かなり異例のキャリアを持つ1曲です。
Madonna – Die Another Day
映画『007 ダイ・アナザー・デイ』(2002年)
全米8位を記録し、1985年以来はじめてビルボードのトップ10に入ったボンド・テーマになりました。2002年と2003年の2年にわたって、最も売れたダンス・シングルでもあります。
ミルウェイ・アマザイとの共作・共同プロデュースで、エレクトロクラッシュとオーケストラの弦を組み合わせた実験的なサウンド。歌詞にはフロイトへの言及まで出てきます。伝統的なボンド・テーマ像からは大きく外れたため評価は割れましたが、ゴールデングローブ賞とグラミー賞2部門にノミネートされました。ピアース・ブロスナン版ボンドが北朝鮮で拷問されるオープニングで流れる曲です。
Eminem – Lose Yourself
映画『8 Mile』(2002年)
ヒップホップの曲として史上初めてアカデミー歌曲賞を受賞した、記念碑的な1曲。エミネムにとって初の全米1位で、12週連続の首位を記録しました。グラミー賞では最優秀ラップ・ソング賞と最優秀ラップ・ソロ・パフォーマンス賞を受賞しています。
エミネム自身の半自伝的な映画のために書かれた曲で、「一度きりのチャンスを掴むか逃すか」という緊張がそのまま音になっています。ミュージックビデオはエミネム自身も監督に名を連ね、MTVビデオ・ミュージック・アワードの最優秀映画ビデオ賞を受賞。ローリング・ストーン誌の「オールタイム・グレイテスト・ソング500」にも選出されました。
Evanescence – Bring Me to Life
映画『デアデビル』(2003年)
エヴァネッセンスのデビューシングル。映画のサウンドトラックに収録されたことをきっかけに広まり、全英・オーストラリア・イタリアなどで1位を獲得しました。グラミー賞では最優秀ハードロック・パフォーマンス賞を受賞しています。
エイミー・リーが19歳のときに書いた曲で、感情が麻痺していく関係から抜け出す実感を歌っています。男性ボーカル(12ストーンズのポール・マッコイ)が入っているのは、当時の市場に合わせるためレーベルが求めたもので、リー自身の意向ではなかったという裏話も。ゴシックな重さとポップな展開が同居した、2000年代前半のロックを象徴するサウンドです。
Kelly Clarkson – Breakaway
映画『プリティ・プリンセス2 ロイヤル・ウェディング』(2004年)
全米6位を記録し、ケリー・クラークソンにとって3曲目のトップ10ヒットになりました。アダルト・コンテンポラリー・チャートでは通算21週の1位という、女性アーティストの記録に並ぶ大ロングヒットです。
もともとはアヴリル・ラヴィーンのデビューアルバム用に書かれた曲で、そちらでは採用されずクラークソンに渡ったという経緯があります。映画のサントラ用の1曲だったはずが大ヒットしてしまい、結果として彼女のセカンドアルバムのタイトルにまでなりました。小さな町から夢に向かって出ていく、という歌詞がそのまま彼女自身の物語と重なっています。
Linkin Park – What I’ve Done
映画『トランスフォーマー』(2007年)
映画のエンドクレジットで流れる曲。全米7位を記録し、純粋な売上枚数ではリンキン・パーク最大のシングルになりました。RIAAから6×プラチナに認定されています。
3rdアルバム『Minutes to Midnight』からの先行シングルで、ミクスチャー路線から一歩踏み出した曲。過去の行いへの後悔をまっすぐ歌う構成が、巨大なロボットが戦うスペクタクル映画の締めくくりに意外なほど効いていました。続編『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』の主題歌『Iridescent』も同じバンドが担当しています。
Paramore – Decode
映画『トワイライト〜初恋〜』(2008年)
大ヒットした『トワイライト』シリーズ第1作のサウンドトラックからのリードシングル。オーストラリア・フランス・ニュージーランドでトップ20に入り、パラモアにとって2曲目の全米トップ40ヒットになりました。
ヘイリー・ウィリアムズら3人のメンバーが映画のために書き下ろした曲で、グラミー賞の最優秀映像作品用楽曲賞にノミネートされました。原作小説の世界観に寄せた不安定な浮遊感と、サビでの爆発。ヴァンパイア・ロマンスという題材に、エモ/ポップパンクのバンドを起用するという判断が見事にはまった例です。
Leona Lewis – I See You
映画『アバター』(2009年)
ジェームズ・キャメロン監督『アバター』の公式主題歌。作曲は『タイタニック』と同じジェームズ・ホーナーで、『My Heart Will Go On』と比較されることの多い曲です。
「同じ監督・同じ作曲家が、12年後にもう一度やった主題歌」という点が面白いところ。歌詞は映画のストーリーラインをなぞり、愛と力と感情を歌います。チャート上の成績は『タイタニック』ほどではありませんでしたが、映画のスケールに音楽をどう合わせるかという意味では、じっくり聴く価値のあるバラードです。
2010年代以降の映画主題歌のおすすめ洋楽
2010年代以降は、アカデミー歌曲賞を狙って第一線のアーティストが本気の1曲を書く、という流れがはっきりしてきます。007シリーズが3作連続で歌曲賞を受賞したのもこの時期です。
Christina Perri – A Thousand Years
映画『トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part1』(2011年)
じわじわと広がっていった、いわゆるスリーパーヒット。翌年の続編公開後に全英11位・全米31位まで到達し、アメリカでは13×プラチナに認定されています。
『トワイライト』シリーズの結婚式シーンのための曲として書かれ、その後は世界中の結婚式で歌われる定番になりました。続編『Part2』では、スティーヴ・カジーとのデュエットとして再録音されています。ピアノとストリングスだけで押していく静かな構成が、時代を超えて残る理由でしょう。
Adele – Skyfall
映画『007 スカイフォール』(2012年)
アカデミー歌曲賞、ゴールデングローブ賞、ブリット・アワード、グラミー賞(最優秀映像作品用楽曲)をすべて受賞した、ボンド・テーマ史上初の完全制覇。11カ国で1位を獲得し、全英2位・全米8位を記録しました。
製作のEONから依頼を受けたアデルは、脚本を読んでから引き受けたといいます。プロデューサーのポール・エプワースとともに、歴代ボンド・テーマの重く陰のあるムードを意識して書き上げた曲。世界で720万枚を売り上げ、デジタル・シングルとしても歴代屈指の記録を残しています。第85回アカデミー賞での本人による初披露も語り継がれる名場面です。
Ed Sheeran – I See Fire
映画『ホビット 竜に奪われた王国』(2013年)
エンドクレジットで流れる曲。全英13位で初登場し、6週目にニュージーランドで1位を獲得。エド・シーランにとって同国での初の首位シングルになりました。
依頼の経緯が少し変わっています。監督のピーター・ジャクソンは、娘のケイティの薦めでエド・シーランに声をかけたとのこと。シーランは映画を観たその日に曲を書き、ほとんどのパートを同じ日に録音してしまったそうです。ケルト的な旋律とアコースティックギターだけで中つ国の空気を出してくる、シンガーソングライターらしい仕事です。
Pharrell Williams – Happy
映画『怪盗グルーのミニオン危機一発』(2013年)
アニメ映画のサウンドトラックから生まれ、全米・全英を含む24カ国で1位を獲得した特大ヒット。2014年にアメリカとイギリスの両方で年間最も売れた曲になり、ビルボードの年間シングルチャートでも1位でした。
ファレル・ウィリアムスのファルセットは、批評家からカーティス・メイフィールドと比較されました。24時間に及ぶミュージックビデオという企画も話題になり、グラミー賞では最優秀ミュージックビデオ賞を受賞。アカデミー歌曲賞にはノミネートされましたが、同年の『アナと雪の女王』の『Let It Go』に敗れています。
Wiz Khalifa ft. Charlie Puth – See You Again
映画『ワイルド・スピード SKY MISSION』(2015年)
全米1位を通算12週間記録し、ラップ・シングルの首位在位としては歴代2位(エミネムの『Lose Yourself』と並ぶ)という記録を残しました。2015年に世界で最も売れた曲です。
2013年に事故で亡くなった主演俳優ポール・ウォーカーへの追悼として書かれた曲。映画のラストシーンと完全に一体化しており、「主題歌が作品の感情を引き受ける」という映画音楽の役割を、これ以上ないかたちで果たしました。グラミー賞では最優秀楽曲賞を含む3部門にノミネートされています。
Sam Smith – Writing’s on the Wall
映画『007 スペクター』(2015年)
ボンド・テーマとして史上初めて全英シングルチャートで1位を獲得した曲。アカデミー歌曲賞とゴールデングローブ賞を受賞し、『Skyfall』に続いて2作連続でのボンド・テーマ受賞となりました。
サム・スミスとジミー・ネイプスの共作。発表直後は「歴代ボンド・テーマと比べて弱い」という声もあり、シャーリー・バッシーの名前がSNSでトレンド入りするという事態にもなりました。それでも賞レースでは高く評価され、ファルセットで押し切る歌唱は聴き返すほど説得力が増していきます。
The Greatest Showman Cast – This Is Me
映画『グレイテスト・ショーマン』(2017年)
キアラ・セトルが歌う、ミュージカル映画のアンセム。ゴールデングローブ賞の主題歌賞を受賞し、アカデミー歌曲賞にもノミネートされました。全英トップ5、オーストラリア・アイルランド・韓国などでトップ10入りしています。
「見世物」として扱われてきた人々が、自分の存在をそのまま肯定して立ち上がる場面の曲。作品を離れても、あの「This is me」の一言だけで成立してしまう強さがあります。日本でも映画のヒットとともに広く知られ、合唱曲やダンスの定番になりました。
Kendrick Lamar & SZA – All the Stars
映画『ブラックパンサー』(2018年)
映画のエンドクレジットで流れる曲。アカデミー歌曲賞とゴールデングローブ賞にノミネートされ、グラミー賞では最優秀レコード賞・最優秀楽曲賞を含む4部門にノミネートされました。
注目すべきは、この映画のサウンドトラック全体をケンドリック・ラマーが手がけたという点です。監督のライアン・クーグラーが直接指名したもので、「一本の映画の音楽を、ひとりのラッパーが世界観ごと設計する」という新しい形を作りました。ミュージックビデオはMTVビデオ・ミュージック・アワードの最優秀視覚効果賞を受賞しています。
Lady Gaga & Bradley Cooper – Shallow
映画『アリー/スター誕生』(2018年)
20カ国以上で1位を獲得し、アカデミー歌曲賞、ゴールデングローブ賞、BAFTA賞(最優秀作曲賞)、グラミー賞を受賞。レディー・ガガはこれにより、同一年にアカデミー賞・BAFTA賞・グラミー賞・ゴールデングローブ賞を獲得した史上初の女性となりました。
マーク・ロンソンらとの共作で、映画の中では3回登場します。最も印象的なのは、ブラッドリー・クーパー演じるジャクソンが、ガガ演じるアリーをステージに呼び上げる場面。あのシーンはロサンゼルスのグリーク・シアターで実際に観客を入れて撮影されました。第91回アカデミー賞での2人のパフォーマンスは、アカデミー賞公式が公開した映像の中でも屈指の再生を記録した名演として知られています。
Billie Eilish – No Time to Die
映画『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021年)
全英・アイルランドで初登場1位。ビリー・アイリッシュにとって初の全英1位で、21世紀生まれのアーティストとして初めて同チャートの首位に立ちました。アカデミー歌曲賞、ゴールデングローブ賞、グラミー賞(最優秀映像作品用楽曲)を受賞しています。
録音当時17歳で、歴代のボンド・テーマ担当としては最年少。兄フィニアス・オコネルとの共作で、オーケストレーションにはハンス・ジマーが参加しています。『Skyfall』『Writing’s on the Wall』に続く3作連続のアカデミー歌曲賞受賞となり、アイリッシュは21世紀生まれで初めてアカデミー賞を獲得した人物になりました。
Rihanna – Lift Me Up
映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』(2022年)
全米2位を記録し、ベルギー・ハンガリー・スイス・南アフリカで1位。アカデミー歌曲賞とゴールデングローブ賞にノミネートされました。
2016年のアルバム『Anti』以来6年ぶりとなるリアーナのソロ作品で、その復帰が映画の主題歌だったという点が話題になりました。ナイジェリアのシンガー、テムスと監督のライアン・クーグラーが共作者に名を連ね、プロデュースはルドウィグ・ゴランソン。主演俳優チャドウィック・ボーズマンの死を受けた作品の追悼という文脈を、静かに引き受けたバラードです。
Billie Eilish – What Was I Made For?
映画『バービー』(2023年)
アカデミー歌曲賞、ゴールデングローブ賞に加え、グラミー賞では最優秀楽曲賞を受賞。映画の曲が最優秀楽曲賞を獲るのは、『タイタニック』の『My Heart Will Go On』以来のことでした。全英・オーストラリアなどで1位、全米14位を記録しています。
ピンク一色の華やかな映画に対して、この曲だけが極端に静かで内向きです。「私は何のために作られたの」という問いを、人形の視点と人間の視点のどちらでも読めるように置いた歌詞が見事。派手なサウンドトラックの中でこの曲が一番深く刺さる、という設計自体が作品の一部になっていました。
HUNTR/X – Golden
映画『Kポップ・デーモン・ハンターズ』(2025年)
アニメ映画の劇中歌が、ビルボードのグローバルチャートで1位、全米・全英・韓国を含む30カ国以上で1位を獲得した1曲。アカデミー歌曲賞とゴールデングローブ賞を受賞し、グラミー賞では最優秀映像作品用楽曲賞を受賞しました。K-POPの曲としてアカデミー賞・グラミー賞を獲ったのは、いずれも史上初です。
歌っているのは架空のグループ「HUNTR/X」名義で、実際の歌声はEJAE、オードリー・ヌナ、レイ・アミの3人。配信作品から生まれた曲が世界のチャートを制圧するという、映画主題歌の新しい形を示しました。
ディズニー映画の主題歌のおすすめ洋楽
アカデミー歌曲賞の歴史を語るうえで外せないのがディズニー作品です。1990年代の「ディズニー・ルネサンス」以降、映画のために書かれた名曲が次々と受賞しています。ここでは代表的な5曲を紹介します。
Celine Dion & Peabo Bryson – Beauty and the Beast
映画『美女と野獣』(1991年)
作詞ハワード・アシュマン、作曲アラン・メンケンによる主題歌。第64回アカデミー賞で歌曲賞を受賞し、ゴールデングローブ賞、グラミー賞2部門(最優秀映像作品用楽曲、最優秀ポップ・パフォーマンス デュオ/グループ)も獲得しました。
映画の中では、ポット夫人役のアンジェラ・ランズベリーが舞踏会のシーンで歌います。ここで聴けるのはシングルとしてリリースされたポップ・デュエット版。当時まだ新人だったセリーヌ・ディオン単独では弱いとディズニーが判断し、実績のあるピーボ・ブライソンをデュエット相手に据えたという経緯があります。なお歌曲賞は、映画公開の8か月前に亡くなった作詞のアシュマンに贈られました。
Elton John – Can You Feel the Love Tonight
映画『ライオン・キング』(1994年)
作曲エルトン・ジョン、作詞ティム・ライスによる名曲。全米4位、全英14位を記録し、カナダ・フランスでは1位。第67回アカデミー賞で歌曲賞、グラミー賞で最優秀男性ポップ・ボーカル・パフォーマンス賞、ゴールデングローブ賞で主題歌賞と、三冠を達成しました。
『ライオン・キング』はこの曲を含む3曲が同時に歌曲賞にノミネートされるという快挙を成し遂げています(同様の記録を持つのは『美女と野獣』『ドリームガールズ』『魔法にかけられて』のみ)。劇中の合唱版とエルトン・ジョン本人が歌うシングル版では表情がかなり違うので、聴き比べるのも面白いです。
Idina Menzel – Let It Go
映画『アナと雪の女王』(2013年)
第86回アカデミー賞で歌曲賞、グラミー賞で最優秀映像作品用楽曲賞を受賞。全米トップ5に入り、ディズニーのアニメーション・ミュージカルの曲が全米トップ10入りしたのは1995年の『ポカホンタス』以来のことでした。
作曲はロバート・ロペスとクリステン・アンダーソン=ロペスの夫妻。氷の力を隠して生きてきたエルサが、山の上で「もう隠さなくていい」と気づく場面の曲です。日本語版『ありのままで』の浸透ぶりも含め、2010年代で最も広く歌われたディズニー曲といえるでしょう。エンドクレジットではデミ・ロヴァートによるポップ版が流れます。
Auli’i Cravalho – How Far I’ll Go
映画『モアナと伝説の海』(2016年)
『ハミルトン』のリン=マニュエル・ミランダが作詞作曲を手がけた1曲。グラミー賞で最優秀映像作品用楽曲賞を受賞し、アカデミー歌曲賞とゴールデングローブ賞にノミネートされました(どちらも『ラ・ラ・ランド』の『City of Stars』に敗れています)。
主人公モアナ役のアウリイ・クラヴァーリョが劇中で歌います。「水平線の向こうはどこまで行けるのか」という問いをそのまま歌にした、ディズニーの「I Want ソング」の系譜にある曲。サウンドトラックにはアレッシア・カーラによるポップ版も収録されています。
ZAYN & Zhavia Ward – A Whole New World
映画『アラジン』(2019年/原曲は1992年)
原曲は1992年のアニメーション版『アラジン』の主題歌で、作曲アラン・メンケン、作詞ティム・ライス。第65回アカデミー賞で歌曲賞、ゴールデングローブ賞、そしてグラミー賞では最優秀楽曲賞を受賞しています。ディズニーの曲で最優秀楽曲賞を獲ったのは、この曲だけです。
ここで紹介しているのは、2019年の実写版『アラジン』エンドクレジットで流れるZAYNとジャヴィア・ワードによるバージョン。原曲のポップ版を歌ったピーボ・ブライソン&レジーナ・ベルはグラミー賞の最優秀ポップ・パフォーマンス デュオ/グループ賞を受賞しており、世代ごとに歌い直されてきた曲だと分かります。魔法の絨毯で新しい世界を見せる、という場面の曲です。
アカデミー歌曲賞から見る映画主題歌の楽しみ方
ここまで紹介してきた曲を並べると、映画主題歌の「当たり方」がいくつかのパターンに分かれていることが見えてきます。
ひとつは、映画のために書き下ろされた曲です。『My Heart Will Go On』『Lose Yourself』『Shallow』『What Was I Made For?』などがこれにあたります。作品のテーマを音楽で言い直す役割を負っているので、映画を観てから聴くと意味が変わる曲が多いのが特徴です。アカデミー歌曲賞は基本的にこのタイプが対象で、既存曲は原則ノミネートされません。
もうひとつは、既にあった曲が映画で生き返るパターン。『Stayin’ Alive』は当初からサウンドトラック用の曲でしたが、『All Star』はアルバム収録曲が『シュレック』で新しい命を得た例、『Kiss from a Rose』は前年のアルバム曲が『バットマン フォーエヴァー』で全米1位まで駆け上がった例です。曲そのものは変わっていないのに、映像と結びついた瞬間に届く範囲が変わる。ここが映画音楽の面白いところです。
シリーズ物の主題歌という切り口も楽しめます。とくに007シリーズは、『Skyfall』(アデル)『Writing’s on the Wall』(サム・スミス)『No Time to Die』(ビリー・アイリッシュ)と3作連続でアカデミー歌曲賞を受賞しました。それ以前は1985年以降トップ10入りするボンド・テーマすら出ていなかったので、マドンナの『Die Another Day』からの流れで聴くと、シリーズが音楽面で完全に立て直された経緯が分かります。
近年で最も大きな変化は、アニメーションと配信作品の存在感です。ディズニー作品が歌曲賞を独占していた1990年代から、『Happy』のようなアニメ映画発の世界的ヒットを経て、2025年には配信アニメ映画から生まれた『Golden』がアカデミー歌曲賞とグラミー賞を獲るところまで来ました。実写の大作映画だけが主題歌の舞台ではなくなった、ということです。
気になった曲があれば、ぜひその映画も観てみてください。曲だけで聴いていたものが、作品の中でどう置かれているかを知ると、まったく別の曲に聞こえることがあります。逆に、映画を先に観てしまった曲は、もう音楽だけで聴くことができません。それも含めて映画主題歌の楽しみ方だと思います。
まとめ
映画の主題歌として生まれたおすすめの洋楽を、70年代から2020年代まで40曲紹介しました。
どこから聴くか迷ったら、まずは『My Heart Will Go On』(タイタニック)と『I Will Always Love You』(ボディガード)の2曲から。映画主題歌がどこまで大きくなれるかを示した、記録の面でも突出した2曲です。
盛り上がりたいときは『Eye of the Tiger』(ロッキー3)や『Danger Zone』(トップガン)。じっくり聴きたいときは『Shallow』(アリー/スター誕生)や『What Was I Made For?』(バービー)あたりが入りやすいはずです。最近の映画から入りたい方は『Golden』(Kポップ・デーモン・ハンターズ)から遡ってみるのもおすすめです。
年代別に洋楽の名曲を探したい方は、こちらの記事もあわせてどうぞ。












