Green Day(グリーン・デイ)は、1987年にアメリカ・カリフォルニア州で結成されたロックバンドです。短く、速く、それでいて異常に耳に残るメロディを持ったパンクロックで90年代のアメリカの音楽地図を塗り替え、2000年代には社会を撃つロックオペラでチャートの頂点に立ちました。パンクをスタジアムの音楽にしてしまった、きわめて珍しいバンドです。
日本で彼らの名前が広く知られるようになったのは、1994年の『Dookie』と、2004年の『American Idiot』でしょう。「Basket Case」で自分の情緒不安定を笑い飛ばしていた若者が、10年後には「Boulevard of Broken Dreams」でグラミーの最優秀レコード賞を手にする——この振れ幅こそがグリーン・デイの面白さです。
この記事では、インディーズ時代のデビュー作から2024年の『Saviors』まで、アルバムを発表順にたどりながら代表曲を1曲ずつ紹介していきます。ロックオペラ『American Idiot』がなぜ特別なのか、日本との長い関わり、そしてロックの殿堂入り後の現在地まで押さえるので、これから聴き始める人の入口として使ってください。
Green Dayとは?
ベイエリアの少年たちが世界を変えるまで
グリーン・デイの原型ができたのは1987年、サンフランシスコ湾岸の小さな町ロデオでした。10歳のころに知り合ったビリー・ジョー・アームストロングとマイク・ダーントが「Sweet Children」という名前でバンドを始め、1989年にグリーン・デイと改名します。バンド名は、マリファナを吸って一日を潰すことを指すスラングから採られました。まだ全員が10代です。
活動の拠点になったのは、バークレーにあったDIYのライブハウス「924ギルマン・ストリート」でした。年齢に関係なく誰でも入れる代わりに、メジャーレーベルと契約したバンドは出演できない——そんな厳格なルールで運営されるパンクの共同体です。彼らはそこで腕を磨き、インディーレーベルのLookout! Recordsから『39/Smooth』(1990年)と『Kerplunk』(1991年)を発表して、地元では確かな人気を得ます。
転機は1994年でした。メジャーのReprise Recordsと契約して発表した3作目『Dookie』が世界的な大ヒットとなり、彼らは一夜にしてMTVのスターになります。しかし同時に、ギルマンの仲間たちからは「売れてしまったバンド」として距離を置かれました。パンクの倫理と巨大な成功のあいだで身動きが取れなくなった居心地の悪さは、次作『Insomniac』の刺々しさにそのまま出ています。
2000年の『Warning』でセールスが落ち込み、キャリアは一度停滞します。そこから彼らが選んだのは、内に閉じることではなく、もっと大きく出ることでした。2004年、9.11以降のアメリカを「Jesus of Suburbia」と名乗る郊外の少年の物語として描いたロックオペラ『American Idiot』を発表。バンド初の全米1位を獲得し、のちにブロードウェイのミュージカルにまでなります。パンクバンドがどこまで行けるかを更新し続けたことが、彼ら最大の功績です。
メンバー
| ボーカル / ギター | Billie Joe Armstrong(ビリー・ジョー・アームストロング) |
| ベース / コーラス | Mike Dirnt(マイク・ダーント) |
| ドラムス | Tré Cool(トレ・クール / 1990年〜) |
| ドラムス(初期) | John Kiffmeyer(ジョン・キフマイヤー / 1988〜1990年) |
曲を書くのは基本的にビリー・ジョーで、詞も彼が担当します。ただしグリーン・デイの音を決定づけているのは、間違いなくリズム隊です。マイク・ダーントのベースは伴奏に引っ込まず、「Longview」のようにイントロからメロディを持って前に出てきます。ドラムスのトレ・クールは正確さと悪ふざけが同居した独特のプレイヤーで、彼が加入してからバンドの演奏力は明らかに一段上がりました。
そのトレ・クールが加わったのは1990年、初代ドラマーのジョン・キフマイヤーが大学進学を選んで抜けたあとのことです。3人になってからのラインナップは、30年以上ひとりも欠けていません。ライブやレコーディングではギタリストのジェイソン・ホワイトが長くサポートに入っており、2012年の3部作では正式メンバーとして参加していました。
数字で見るGreen Day
全世界での総売上は7,500万枚以上とされています。グラミー賞は20回のノミネートで5回受賞。内訳は『Dookie』の最優秀オルタナティブ・アルバム賞(1995年)、『American Idiot』(2005年)と『21st Century Breakdown』(2010年)の最優秀ロック・アルバム賞、「Boulevard of Broken Dreams」の最優秀レコード賞(2006年)、そしてブロードウェイ版『American Idiot』のキャストアルバムに贈られた最優秀ミュージカル・ショー・アルバム賞(2011年)です。
とりわけ突出しているのが『Dookie』の数字です。1999年にアメリカ国内1,000万枚のダイヤモンド認定を受けたあと、2024年9月にはついに2,000万枚を突破し、アメリカ史上13作目となる「ダブル・ダイヤモンド」認定を獲得しました。パンクロックのアルバムとしては、ほぼ例のない到達点です。
全米アルバムチャートで1位を獲ったのは『American Idiot』『21st Century Breakdown』『Revolution Radio』。そして2015年、資格を得た最初の年でロックの殿堂入りを果たしました。デビューから25年、メジャー1作目からは21年での殿堂入りです。
Green Dayのおすすめ曲・アルバム
1st Album『39/Smooth』(1990年)
1990年4月、インディーレーベルのLookout! Recordsから発表されたデビューアルバムです。この時点でビリー・ジョーとマイク・ダーントはまだ10代、ドラムスはトレ・クールではなくジョン・キフマイヤーでした。10曲で30分ほどという、いかにも80年代末のパンクらしい潔い分量です。
いま聴くと、のちの爆発力よりも思春期の甘酸っぱさが前に出た1枚です。歪んだギターと速いビートの上で歌われているのは、政治でも反抗でもなく、片思いと居場所のなさ。この時期の音源は現在、2枚のEPと合わせた編集盤『1,039/Smoothed Out Slappy Hours』(1991年)の形で聴かれることが多くなっています。
『Going to Pasalacqua』
アルバム6曲目。デビュー作の中でも早くからライブの定番になった曲で、いまも節目のステージで演奏されることがあります。ビリー・ジョーの声がまだ完全に少年のもので、そのぶん歌の内容がまっすぐ届きます。
歌われているのは、恋に落ちる瞬間の高揚と、それがいつか壊れることへの怯えが同時に来てしまう感覚です。走り出すイントロから、サビでいったん重心が落ちる展開。この「速いのにどこか切ない」という配合は、のちの「Basket Case」や「When I Come Around」まで一本でつながっています。
『At the Library』
アルバムの1曲目。オリジナル盤での正式タイトルは「At the Library with Waba Sé Wasca」で、のちの編集盤で「At the Library」に短縮されました。図書館で見かけた女の子に声をかけられないまま終わる、という身も蓋もなく10代の歌です。
面白いのは、この曲がすでに完全にグリーン・デイの形をしていることです。8ビートを刻むギター、跳ねるベース、ためらいなく上がっていくコーラス。4年後に世界を獲る設計図は、このデビュー作の1曲目にほぼ全部書かれていました。
収録曲
- At the Library
- Don't Leave Me
- I Was There
- Disappearing Boy
- Green Day
- Going to Pasalacqua
- 16
- Road to Acceptance
- Rest
- The Judge's Daughter
2nd Album『Kerplunk』(1991年)
1991年12月17日にイギリスで、翌1992年1月にアメリカで発売された2作目。レーベルは変わらずLookout! Recordsですが、発売初日に1万枚を売り切るという、インディー作品としては異例のスタートを切りました。最終的な売上は全世界で400万枚以上。この数字がメジャーレーベルの目に留まり、Repriseとの契約へつながります。
最大の変化はドラムです。前作のあとに加入したトレ・クールが叩くことで、リズムに推進力と手数が生まれ、バンドの演奏がはっきりと引き締まりました。曲そのものも、初期衝動だけで押し切っていた前作から一歩進んで、構成とフックの作り方が明確に上手くなっています。『Dookie』の直前の姿を確認できる、重要な1枚です。
『2000 Light Years Away』
アルバムの1曲目にして、初期を代表する曲のひとつ。ビリー・ジョーが、のちに妻となるエイドリアンと遠く離れて過ごしていた時期に書いた曲として知られています。「2000光年の彼方」というタイトルは、会えない距離をそのまま宇宙のスケールに置き換えたものです。
聴きどころは、切迫したテンポとメロディの甘さのギャップです。走り続けるドラムの上で、歌はどんどんロマンティックになっていく。ライブではいまも定番曲として演奏されており、初期の曲でこれだけ長く生き残っているものは多くありません。
『Christie Rd.』
アルバム4曲目。タイトルは、10代の彼らがよくたむろしていたという地元の道の名前から取られています。何もない町で、行き場のない時間をどこかでやり過ごす——という、のちの「Longview」につながる主題がここで初めてはっきり形になりました。
この曲はテンポを上げません。抑えたイントロからサビでぐっと開ける構成で、初期グリーン・デイのなかではもっとも情景的な1曲です。速さで押し切らずに感情を出せることを、彼らはこの時点ですでに知っていました。
収録曲
- 2000 Light Years Away
- One for the Razorbacks
- Welcome to Paradise
- Christie Rd.
- Private Ale
- Dominated Love Slave
- One of My Lies
- 80
- Android
- No One Knows
- Who Wrote Holden Caulfield?
- Words I Might Have Ate
3rd Album『Dookie』(1994年)
1994年2月1日発売、メジャー移籍第1作。プロデューサーはロブ・カヴァロで、以後この人との組み合わせがグリーン・デイの音の基準になります。全米2位まで上昇し、1995年のグラミーで最優秀オルタナティブ・アルバム賞を受賞。アメリカ国内だけで2,000万枚を売り上げ、2024年に史上13作目のダブル・ダイヤモンド認定を受けました。
14曲で40分弱。1994年のアメリカはグランジ一色で、重くて内省的な音楽が主流でした。そこに彼らが持ち込んだのは、速くて、笑えて、口ずさめる音楽です。パンクの速度に、離れないメロディとロブ・カヴァロのクリアな音像を足す——その一点だけで、当時ぽっかり空いていた席を埋めてしまいました。グリーン・デイを1枚だけ聴くなら、まずこれです。
『Longview』
1994年のシングルで、バンドにとって初のモダンロック・チャート1位を記録した曲です。あのうねるベースラインについて、マイク・ダーントはLSDの影響下で思いついたものだと語っています。曲名はワシントン州ロングビューという町の名前から。この曲を初めて演奏した場所でした。
歌われているのは、ひたすら「退屈」です。テレビの前から動けず、何もしたくないし何もできない。マーク・コー監督が地下室でソファを引き裂く姿を撮ったミュージックビデオがMTVで大量に流れ、バンドを一気にお茶の間まで運びました。ベースだけで曲を成立させてしまう発明という意味でも、90年代ロックの重要曲です。
『Basket Case』
1994年8月1日発売の2ndシングル。モダンロック・チャートで5週連続1位、全英7位。グリーン・デイという名前を世界中に届けた、最大の代表曲です。イントロの「Do you have the time to listen to me whine?」から一気に持っていかれます。
題材はビリー・ジョー自身のパニック障害でした。まだ診断がついていなかった時期、自分がおかしくなったのではないかという恐怖を、彼は速い3コードのポップソングに書き換えます。「いちばんいい判断だった」と本人が振り返るとおり、深刻な話を深刻に鳴らさない選択が、この曲を普遍的なものにしました。ミュージックビデオは廃墟となった精神科施設で撮影されています。
『When I Come Around』
1994年12月に発売されたシングル。モダンロック・チャートで7週連続1位という、『Dookie』からのシングルで最長の首位記録を打ち立てました。ラジオエアプレイでも全米6位。「Basket Case」と並ぶ、このアルバムの顔です。
アルバムの中では珍しくミドルテンポで、走らないぶんコード進行の良さがそのまま出ています。恋人と一度離れて、それでも戻る場所は変わらないと歌う内容。速い曲ばかりのバンドだと思って聴き始めた人が、いちばん驚くのがこの曲だと思います。
収録曲
- Burnout
- Having a Blast
- Chump
- Longview
- Welcome to Paradise
- Pulling Teeth
- Basket Case
- She
- Sassafras Roots
- When I Come Around
- Coming Clean
- Emenius Sleepus
- In the End
- F.O.D.
4th Album『Insomniac』(1995年)
1995年10月10日発売、初週17万枚以上を売って全米2位。プロデューサーは引き続きロブ・カヴァロで、アメリカ国内では200万枚に達しています。前作から1年半という短い間隔での発表でした。
『Dookie』の成功への反動が、そのまま音になった1枚です。速く、暗く、荒い。売れたことでパンクシーンから背を向けられた居心地の悪さが、そのまま歌詞と音圧に出ています。コラージュ作家ウィンストン・スミスによる不穏なジャケットも含め、当時の彼らの精神状態がいちばん生々しく残っている作品です。
『Geek Stink Breath』
1995年9月に発売された先行シングル。覚醒剤(メタンフェタミン)が身体を蝕んでいく様子を、歯が抜けていくという生理的な描写で歌った曲です。ミュージックビデオには実際の抜歯手術の映像が使われ、当時としてはかなり踏み込んだ内容でした。
音も前作より明らかに厚く、歪んでいます。『Dookie』の明るいパンクを期待して針を落とした人が、最初の1分で表情を変える——そういう狙いがはっきりある曲です。ポップスターとして消費されることへの拒否表明として聴くと、意味がよくわかります。
『Brain Stew / Jaded』
アルバムの10曲目と11曲目で、1996年に2曲セットでシングルカットされました。重い「Brain Stew」から、切れ目なく高速の「Jaded」へなだれ込む構成がそのまま作品の売りになっています。ライブでも必ずこの順番で演奏される、事実上ひとつの曲です。
「Brain Stew」が描くのは、眠れないという一点だけ。半音ずつ下がっていくリフが延々と繰り返され、頭が冴えたまま夜が終わらない感じを音そのもので再現しています。そこから「Jaded」で一気に加速する瞬間の解放感が凄まじく、グリーン・デイの構成力がいちばんわかりやすく出た組み合わせです。
収録曲
- Armatage Shanks
- Brat
- Stuck with Me
- Geek Stink Breath
- No Pride
- Bab's Uvula Who?
- 86
- Panic Song
- Stuart and the Ave.
- Brain Stew
- Jaded
- Westbound Sign
- Tight Wad Hill
- Walking Contradiction
5th Album『Nimrod』(1997年)
1997年10月14日発売、初週8万1,000枚で全米10位。全18曲という、彼らとしては最長の作品です。アメリカ国内で200万枚を売り上げました。
この1枚の役割は「実験」です。サーフロック、スカ、ハードコア、インストゥルメンタル、そして弦楽入りのアコースティックバラードまで、パンクバンドの枠に収まらないものを次々に試しています。統一感という点では散らかっていますが、この振れ幅があったからこそ、のちの『American Idiot』のような大きな作品を作る筋力がついたと言えます。
『Hitchin’ a Ride』
1997年9月29日発売の先行シングル。ヴァイオリンによる不気味なイントロから、いきなりベースリフがなだれ込む構成が強烈です。断酒に失敗して、また飲み始めてしまう人物の一人称で歌われています。
サーカスのような大げさなアレンジと、ビリー・ジョーの吐き捨てるような歌い方の相性が抜群で、『Nimrod』の実験精神をもっとも成功させた曲です。ライブでも長く演奏されており、後年の作品にも通じる劇場的な感覚がここで初めて表に出ました。
『Good Riddance (Time of Your Life)』
1997年12月2日発売。全米オルタナティブ・チャートで2位まで上がり、1998年にはMTVビデオ・ミュージック・アワードの最優秀オルタナティブ・ビデオ賞を受賞——バンドにとって初のVMAでした。同年の『となりのサインフェルド』最終回で使われたこともあって、アメリカでは世代を超えて知られています。シングルとしての認定枚数は、バンドの全曲中で最大です。
アコースティックギター1本と弦楽だけ、という編成はグリーン・デイとしては異例です。書かれたのは1993年、去っていった恋人への苛立ちからで、原題の「Good Riddance」は「せいせいした」という意味の皮肉でした。それが結果として卒業式やプロムの定番曲になったのだから面白い。皮肉が祝福に読み替えられてしまった、かなり珍しい曲です。
収録曲
- Nice Guys Finish Last
- Hitchin' a Ride
- The Grouch
- Redundant
- Scattered
- All the Time
- Worry Rock
- Platypus (I Hate You)
- Uptight
- Last Ride In
- Jinx
- Haushinka
- Walking Alone
- Reject
- Take Back
- King for a Day
- Good Riddance (Time of Your Life)
- Prosthetic Head
6th Album『Warning』(2000年)
2000年10月3日発売、初週15万6,000枚で全米4位。プロデュースはバンド自身が手がけ、ロブ・カヴァロはエグゼクティブ・プロデューサーに回りました。メジャー移籍後で初めてマルチプラチナに届かずゴールド止まりとなり、キャリアで最も売上が落ち込んだ作品です。とはいえアメリカ国内で120万枚以上を売っています。
音の中身は、数字が示すよりずっと豊かです。アコースティックギター、ハーモニカ、アコーディオン、マリアッチ風のブラス。パンクの記号をいったん外して、フォークやポップの語彙で曲を組み立て直しています。当時は戸惑いをもって迎えられましたが、いまでは「グリーン・デイの隠れた名盤」として再評価が進んだ1枚です。
『Minority』
2000年8月に発売された先行シングル。モダンロック・チャートで5週連続1位、全英18位を記録しました。アコースティックギターのカッティングとホーンで始まる、行進曲のように陽気な曲です。
歌の内容は「多数派に属さないことを自分で選ぶ」という宣言。ミュージックビデオでは、彼らだけがパレードの山車の上にいて、沿道にほとんど人がいません。孤立を悲観するのではなく、笑いながら選び取ってみせるトーンが、このバンドらしいところです。のちの『American Idiot』の政治性は、この曲から地続きにあります。
『Warning』
2000年12月11日発売のシングルで、アルバムの1曲目でもある表題曲。アコースティックギターのリフが延々と鳴り続ける、グリーン・デイとしてはきわめて軽やかな曲です。
歌詞は、身のまわりにあふれる「〜するな」という警告文をひたすら並べていくというもの。注意書きに従って生きているうちに、自分で考えることをやめてしまうのではないか、という問いが根底にあります。深刻な主題を軽い曲調で運ぶ、彼らの得意技がよく効いた1曲です。
収録曲
- Warning
- Blood, Sex and Booze
- Church on Sunday
- Fashion Victim
- Castaway
- Misery
- Deadbeat Holiday
- Hold On
- Jackass
- Waiting
- Minority
- Macy's Day Parade
7th Album『American Idiot』(2004年)
2004年9月21日発売。バンド初の全米1位、全英でも1位を獲得し、全世界で2,300万枚以上を売り上げました。2005年のグラミーでは最優秀ロック・アルバム賞を受賞し、最優秀アルバム賞にもノミネート。プロデューサーはロブ・カヴァロです。キャリアの断層と言っていい作品で、これ以降グリーン・デイはスタジアム規模のバンドになりました。
内容は13曲で構成されたロックオペラです。「Jesus of Suburbia」と名乗る郊外の少年が町を出て、破滅を体現する分身のSt. Jimmyと、良心を体現する女性Whatsernameのあいだで引き裂かれていく——という物語が通して語られます。9分を超える組曲が2曲(「Jesus of Suburbia」と「Homecoming」)入っているのも異例。イラク戦争下のアメリカへの怒りを、政治的スローガンではなく一人の若者の物語として書いたことが、この作品を長持ちさせています。
『American Idiot』
2004年8月6日発売の先行シングル。全米ホット100では61位でしたが、オルタナティブ・エアプレイでは1位、全英では3位に達しました。2005年のグラミーでは最優秀レコード賞を含む4部門にノミネートされています。
ビリー・ジョーがこの曲を書いた発端は、イラク戦争をめぐる当時の報道への苛立ちでした。恐怖を煽ることが仕事になってしまったメディアと、それを疑わない空気への異議申し立てです。2分54秒しかない直球のパンクソングで、アルバム全体の宣戦布告として完璧に機能しています。
『Holiday』
アルバム3曲目で、3rdシングルとして全米19位を記録しました。物語のなかでは、主人公が町を出て自由を手に入れた瞬間にあたる曲です。
戦争を追認する政治家の演説を模した中盤のパートが白眉で、ライブではここで観客全員が拳を上げます。速いパンクでありながらオルガンやコーラスで大きく聴かせる作りは、彼らがこのアルバムで手に入れた新しい武器でした。次の「Boulevard of Broken Dreams」と続けて聴くと効果が倍増します。
『Boulevard of Broken Dreams』
2004年11月29日発売。全米ホット100で5週にわたって2位を記録し、2006年のグラミーで最優秀レコード賞を受賞しました。2005年のMTVビデオ・ミュージック・アワードでは最優秀ビデオ賞を含む6部門を制覇。グリーン・デイのキャリアで最も広く聴かれた曲です。
物語のうえでは、自由を手にした翌日の曲にあたります。「Holiday」がパーティなら、こちらは二日酔い。ひとりで歩く影しか道連れがいない、という一行に、この作品の孤独が凝縮されています。抑えたアルペジオから徐々に厚くなっていく構成で、パンクバンドがここまで静かに始められることを示した1曲でもあります。
『Wake Me Up When September Ends』
2005年6月13日発売、全米6位。20週にわたってチャートに残り続けた、アルバムからの4枚目のシングルです。物語の文脈からは少し離れて、単体のバラードとして愛されている曲でもあります。
原点にあるのは、ビリー・ジョーが10歳だった1982年9月に父を亡くした経験です。葬儀のあと部屋にこもった彼が、母に「9月が終わったら起こして」と言った——その一言を20年以上抱えて、ようやく曲にしました。サミュエル・ベイヤー監督のミュージックビデオは、イラク戦争に出征する恋人を描いた短編映画のような作りで、この曲を反戦の文脈にも接続しています。
収録曲
- American Idiot
- Jesus of Suburbia
- Holiday
- Boulevard of Broken Dreams
- Are We the Waiting
- St. Jimmy
- Give Me Novacaine
- She's a Rebel
- Extraordinary Girl
- Letterbomb
- Wake Me Up When September Ends
- Homecoming
- Whatsername
8th Album『21st Century Breakdown』(2009年)
2009年5月15日発売。プロデューサーには、ニルヴァーナ『Nevermind』などで知られるブッチ・ヴィグを迎えました。全米・全英ともに1位を獲得し、世界24か国でチャート1位に。2010年のグラミーでは再び最優秀ロック・アルバム賞を受賞しています。
「Heroes and Cons」「Charlatans and Saints」「Horseshoes and Handgrenades」という3幕構成のコンセプトアルバムで、クリスチャンとグロリアという若い2人の目を通してブッシュ政権後のアメリカを描いています。全18曲69分。前作より重く、ピアノやストリングスも使った大作志向で、賛否はあるものの彼らの野心がもっとも大きく出た作品です。
『Know Your Enemy』
2009年4月16日発売の先行シングル。5年ぶりの新曲としてこの曲が出たとき、多くのリスナーが安心したはずです。3分ちょうど、余計なものが何もない直球のロックンロールでした。
「敵を知れ」というタイトルどおり、怒りの矛先を自分で確かめろと繰り返す曲です。ライブでは客席からファンをステージに上げて一緒に歌わせるのが恒例になっており、この時期のグリーン・デイの巨大なショーを象徴する定番曲になりました。
『21 Guns』
2009年5月発売の2ndシングル。全米22位、オルタナティブ・エアプレイ3位を記録し、「Wake Me Up When September Ends」以来のヒットとなりました。2010年のグラミーでは、最優秀ロック・パフォーマンス賞と最優秀ロック・ソング賞の2部門にノミネートされています。
タイトルの「21 Guns」は、戦死者に捧げる21発の礼砲のこと。「まだ戦う価値のあるものが残っているか」と問いかける歌詞が、アリーナで鳴らすことを前提にした大きなメロディに乗ります。のちにブロードウェイ版『American Idiot』のキャストと録音したバージョンも発表されました。
収録曲
- Song of the Century
- 21st Century Breakdown
- Know Your Enemy
- ¡Viva la Gloria!
- Before the Lobotomy
- Christian's Inferno
- Last Night on Earth
- East Jesus Nowhere
- Peacemaker
- Last of the American Girls
- Murder City
- ¿Viva la Gloria? (Little Girl)
- Restless Heart Syndrome
- Horseshoes and Handgrenades
- The Static Age
- 21 Guns
- American Eulogy
- See the Light
3部作『¡Uno!』『¡Dos!』『¡Tré!』(2012年)
2012年9月から12月にかけて、3枚のアルバムを立て続けに発表するという異例の企画です。コンセプトアルバム2作で膨れ上がった器を一度壊し、ガレージバンドに戻ってみせる試みでした。3枚とも全米チャートのトップ10入りを果たしています。
ただしツアーは続きませんでした。2012年9月、ラスベガスのiHeartRadioミュージック・フェスティバルで持ち時間を短縮されたビリー・ジョーがステージ上で激昂してギターを壊し、直後に薬物とアルコールの治療に入ります。当初2013年1月発売予定だった『¡Tré!』は12月に前倒しで発表され、企画そのものは完走したものの、バンドは長い立て直しの期間に入りました。
『Oh Love』
2012年7月16日発売、3部作全体の先行シングルにあたる曲です。米ロック・ソングス・チャートに初登場1位を記録しました。バンドにとって、チャートに1位で入った初めての曲です。
5分近くあり、テンポも遅め。パンクというより70年代のクラシックロックに近い手触りで、3部作の「肩の力を抜く」という狙いがよく出ています。ギターソロをたっぷり弾く彼らというのも、この時期ならではです。
『¡Uno!』収録曲
- Nuclear Family
- Stay the Night
- Carpe Diem
- Let Yourself Go
- Kill the DJ
- Fell for You
- Loss of Control
- Troublemaker
- Angel Blue
- Sweet 16
- Rusty James
- Oh Love
12th Album『Revolution Radio』(2016年)
2016年10月7日発売。初週9万5,000ユニットで全米1位を獲得し、バンドにとって3枚目の全米1位アルバムとなりました。プロデュースはバンド自身。3部作から4年、ビリー・ジョーの治療とバンドの立て直しを経ての復帰作です。
大がかりな物語は作らず、12曲であの時期のアメリカの空気を切り取るという方針が取られました。銃、暴力、SNS、抗議のデモ。『American Idiot』のときのようにフィクションの主人公を立てず、目の前の出来事をそのまま書いています。分量も45分弱と引き締まっていて、後期グリーン・デイでは入りやすい1枚です。
『Bang Bang』
2016年8月11日発売の先行シングル。4年ぶりの新曲として発表され、久々に速く攻撃的なグリーン・デイが戻ってきたことを印象づけました。
歌詞は銃乱射事件の犯人の一人称で書かれています。注目されたいという欲望と暴力が地続きになってしまった状況を、加害者の内側から描くという踏み込んだ手法。聴いていて気持ちのいい曲ではありませんが、そこが狙いです。バンドが安全な位置から物を言うのをやめた瞬間として重要な曲でもあります。
『Still Breathing』
2016年9月23日発売のシングル。アルバムの7曲目で、『Revolution Radio』でもっとも開けた曲です。ロックラジオを中心に長く支持され、この時期の代表曲になりました。
兵士、ギャンブラー、依存症に苦しむ人——それぞれ違う崖っぷちに立つ人物を描きながら、「それでもまだ息をしている」と繰り返します。治療を経たビリー・ジョー自身の実感が混ざっているのは明らかで、「Basket Case」で自分の不安を笑い飛ばした人が、20年後に同じ主題をこう歌うのか、という感慨があります。
収録曲
- Somewhere Now
- Bang Bang
- Revolution Radio
- Say Goodbye
- Outlaws
- Bouncing off the Wall
- Still Breathing
- Youngblood
- Too Dumb to Die
- Troubled Times
- Forever Now
- Ordinary World
14th Album『Saviors』(2024年)
2024年1月19日発売。プロデューサーには約10年ぶりにロブ・カヴァロが復帰しました。全英1位、全米でもトップ5に入っています。2021年から2023年にかけて、ロンドンのRAKスタジオとロサンゼルスで録音されました。2020年の『Father of All Motherfuckers』のセッションで形にならなかった曲を作り直したものが7曲含まれています。
ひとことで言えば、『Dookie』の速さと『American Idiot』の射程を同じ1枚に同居させた作品です。ビリー・ジョーは「従来のアメリカン・ドリームが多くの人にとって機能していない」という認識を作品の出発点として語っています。キャリア30年を超えたバンドの新作としては驚くほど瞬発力があり、後期の入口としても勧められます。
『The American Dream Is Killing Me』
2023年10月に発表された先行シングルで、アルバムの1曲目。タイトルからして『American Idiot』の20年後の続編という位置づけがはっきりしています。
住む場所を失っていく人々や、分断されたコミュニティを具体的に描きながら、コーラスは驚くほどキャッチーです。深刻な話をシンガロングにしてしまうという彼らの技が、そのまま健在であることを示す1曲。イントロのコーラスから曲に入る作りも含めて、ライブ映えを完全に計算した作りです。
『Look Ma, No Brains!』
2023年11月発表の2ndシングル。2分3秒しかありません。アルバムの中でもっとも速く、もっとも短い曲です。
「頭が空っぽ」と自分で歌ってしまう自嘲的な内容で、『Dookie』や『Insomniac』の頃の疾走感がそのまま戻ってきています。50代のバンドがこの速度で鳴らせること自体が、この曲最大の説得力です。彼らのパンクバンドとしての側面を確認したいなら、まずここを聴いてください。
『Dilemma』
アルバムからの3rdシングル。ビリー・ジョーが自身の依存症との付き合いを歌った曲で、シラフでいることと、それが崩れることのあいだで揺れる状態を率直に書いています。
音は明るいパワーポップです。「Basket Case」がパニック障害を、「Still Breathing」が生き延びることを歌ったように、彼らは一貫して自分の弱さを速いポップソングに変換してきました。その最新形がこの曲で、30年前と同じ方法がいまも有効であることを証明しています。
収録曲
- The American Dream Is Killing Me
- Look Ma, No Brains!
- Bobby Sox
- One Eyed Bastard
- Dilemma
- 1981
- Goodnight Adeline
- Coma City
- Corvette Summer
- Suzie Chapstick
- Strange Days Are Here to Stay
- Living in the '20s
- Father to a Son
- Saviors
- Fancy Sauce
『American Idiot』がブロードウェイに立った日
グリーン・デイのキャリアで、もっとも予想外だった出来事はこれかもしれません。2010年4月20日、『American Idiot』がブロードウェイのセント・ジェームズ劇場でミュージカルとして開幕したのです。バンドは1曲も演奏せず、アルバムの物語を俳優たちが演じるという形でした。
結果は成功でした。2011年4月まで約1年にわたって上演され、トニー賞では3部門にノミネートされて舞台美術賞と照明デザイン賞の2部門を受賞。キャストアルバムは2011年のグラミーで最優秀ミュージカル・ショー・アルバム賞を獲得しています。パンクバンドのアルバムが、賞レースの舞台作品として評価されたわけです。
なぜそれが可能だったのか。理由は単純で、『American Idiot』が最初から「物語」として書かれていたからです。Jesus of Suburbia、St. Jimmy、Whatsername という3人の登場人物には性格と役割があり、曲順がそのまま時間の流れになっている。音楽アルバムとしてよくできていることと、舞台の脚本として成立することが、この作品では同じことでした。
もうひとつ大きいのは、このアルバムが2004年という時代に強く結びつきながら、時代を越えてしまったことです。イラク戦争と当時のメディア環境への怒りから生まれた作品でありながら、歌われているのは「誰も信じられない場所で、どうやって自分を保つか」という普遍的な問いでした。だからこそ20年後のツアーで全曲を通して演奏しても、まったく古びていません。
日本とGreen Day
グリーン・デイの初来日は1996年1月、『Insomniac』を携えたツアーでした。大阪、東京、福岡、川崎といったライブハウス規模の会場を回っており、当時の日本のパンクシーンとの距離の近さを物語るように、Hi-STANDARDが前座を務めたことでも知られています。このときの1996年1月27日の東京公演の音源は、のちに『Warning』のボーナストラック「Brat」として収録されました。
以降、日本での彼らはフェスとともに記憶されています。2000年と2004年のサマーソニックにヘッドライナー級で出演し、とくに『American Idiot』発表直前の2004年公演は、その後の爆発を先取りする内容として語り草になりました。2012年のサマーソニックにも出演しています。
2020年の来日公演は新型コロナウイルスの影響で実現しませんでしたが、2025年2月、Saviorsツアーの一環としてようやく戻ってきました。2月21日の大阪城ホール、23日のポートメッセなごや、25日と26日のKアリーナ横浜という日程です。『Dookie』の30周年と『American Idiot』の20周年を祝うツアーだけあって、両アルバムの曲を軸にした濃いセットリストが組まれました。
日本におけるグリーン・デイは、「90年代のパンクバンド」として知った層と、「American Idiot以降のスタジアムバンド」として知った層が、はっきり分かれて重なっている状態にあります。もし後者からこの記事に来た人がいるなら、ぜひ『Dookie』まで遡ってみてください。同じバンドの、まったく違う顔が見つかるはずです。
ロックの殿堂入りと、いまのGreen Day
2015年、グリーン・デイはロックの殿堂入りを果たしました。資格が発生するのはメジャーデビューから25年後で、彼らはその最初の年に選出されています。ギルマン・ストリートのDIYシーンから出てきたバンドが、ロックの正史のまん中に置かれたわけです。
2024年からのSaviorsツアーは、世界87公演という大規模なものになりました。目玉は、『Dookie』の30周年と『American Idiot』の20周年を記念して、両アルバムを頭から最後まで通して演奏したことです。40分のパンクアルバムと、57分のロックオペラを1晩で続けて鳴らす——それをやり切れるバンドは、そう多くありません。
彼らの現在地を象徴しているのは、その2枚が並列で成立することだと思います。10代の退屈と情緒不安定を歌ったアルバムと、国家への怒りを物語にしたアルバム。どちらもグリーン・デイで、どちらも観客が全曲歌える。デビューから35年以上が経ってなお、新作『Saviors』が「懐かしむための作品」ではなく現在進行形の音として鳴っていることも含めて、いまも珍しく健全な状態にあるバンドです。
まとめ
Green Day(グリーン・デイ)は、バークレーの小さなライブハウスから出発して、パンクロックをアメリカの主流に押し上げ、さらにそれをブロードウェイの舞台にまで運んだバンドです。速い3コードの曲で自分の不安を笑い飛ばすところから始まり、国全体への怒りを物語として書けるところまで来ました。その振れ幅の大きさが、30年以上聴かれ続けている理由です。
最初の1枚に迷ったら、『Dookie』から入ってください。40分弱に「Longview」「Basket Case」「When I Come Around」が並ぶ密度は、いま聴いても異常です。そこで手応えがあれば、次は『American Idiot』へ。物語として通して聴くと、1曲ずつ聴くのとはまったく別の体験になります。もう少し変わったものが聴きたくなったら、実験だらけの『Nimrod』か、再評価の進んだ『Warning』がおすすめです。
曲単位で試すなら、まずは「Basket Case」「When I Come Around」「Boulevard of Broken Dreams」「Good Riddance (Time of Your Life)」あたりから。ここに最新作の「The American Dream Is Killing Me」を足せば、彼らの35年をだいたい一望できます。同じ人が同じ方法で、10代の不安も50代の諦めの悪さも歌い続けている——それがわかったとき、このバンドはぐっと面白くなります。


