PR HIP HOP 80年代 90年代 HIP HOP ROCK アーティスト 洋楽 男性アーティスト

Beastie Boys(ビースティ・ボーイズ)のおすすめ人気曲・アルバム

※本記事にはプロモーションが含まれます。

Beastie Boys(ビースティ・ボーイズ)は、1981年にニューヨークで結成されたヒップホップ・グループです。出発点はハードコア・パンクのバンド。そこからラップへ、さらに生演奏へと自分たちの音を作り替え続け、ヒップホップとロックのあいだにあった壁を実質的に取り払ってしまった3人組です。

いちばん知られているのは『Sabotage』か『Fight for Your Right』でしょうか。刑事ドラマを真似たあのミュージックビデオ、あるいはパーティーで暴れるだけの初期のイメージ——けれど彼らの本領は、そのどちらにも収まりません。サンプリングを芸術にまで押し上げた『Paul’s Boutique』、楽器を手に取り直した『Check Your Head』、そして東京で撮影された怪獣映画のようなMV。作品ごとに景色がまるで変わるのが、このグループの面白さです。

この記事では、Beastie Boysがどんなグループなのかを整理したうえで、8枚のスタジオアルバムを発表順にたどりながら、それぞれの代表曲を1曲ずつ紹介していきます。名前は知っているけれど何から聴けばいいか分からない、という方の道案内になれば幸いです。

Beastie Boys(ビースティ・ボーイズ)とは?

ハードコア・パンクからヒップホップへ

始まりは1979年に結成されたハードコア・パンクバンド、The Young Aborigines です。1981年の夏にベーシストがニューヨークを離れたことをきっかけに、残ったMichael Diamond(Mike D)、John Berry、Kate Schellenbachに、Adam Yauch(MCA)がベースとして加わり、Beastie Boysと名乗るようになりました。バンド名を提案したのはJohn Berry。「Boys Entering Anarchistic States Towards Inner Excellence」の頭文字だという説明は、名前が決まったあとに作られた後付けです。

1982年11月に録音したEP『Polly Wog Stew』は、ニューヨーク・ハードコアの初期の記録として知られる作品。CBGBやMax’s Kansas Cityといった伝説的なライブハウスに出演していました。同じ1982年、John Berryに代わって、The Young and the UselessのボーカルだったAdam Horovitz(Ad-Rock)が加入します。

転機は1983年のシングル『Cooky Puss』。アイスクリーム店への悪ふざけの電話をそのまま使ったコミカルなヒップホップ曲で、これがクラブで話題になりました。彼らのDJを務めていたニューヨーク大学の学生Rick Rubinが、Russell SimmonsとともにDef Jam Recordingsを立ち上げ、Beastie Boysと契約。ただしRubinは1984年にKate Schellenbachをグループから外しており、ここで3人組の形が固まりました。

1985年、ナイトクラブのDanceteriaで彼らを見つけたマドンナのVirgin Tourに前座として同行。同じ年にはRun-D.M.C.のRaising Hellツアーにも帯同し、一気に全国区の知名度を得ます。そして1986年11月15日、1stアルバム『Licensed to Ill』をリリース。ラップのアルバムとして史上初めてビルボード200で1位を獲得し、5週にわたってその座を守りました。

その後、Def Jamからの報酬未払いをきっかけに1988年にCapitol Recordsへ移籍。サンプリングを極限まで使った『Paul’s Boutique』(1989年)は商業的には期待外れに終わりましたが、のちに評価が逆転し、いまでは名盤として語られています。90年代には自主レーベルGrand Royalとカルチャー誌『Grand Royal Magazine』も運営。音楽以外の分野でも影響力を持つ存在になりました。

2012年5月4日、Adam Yauchが耳下腺がんのため47歳で亡くなります。残された2人は、Beastie Boysとして新たな作品を作ることはないと表明。31年の活動に、事実上の幕が下りました。

メンバー

ボーカル/ドラムスMichael “Mike D” Diamond(マイク・D)1981年〜2012年
ボーカル/ベースAdam “MCA” Yauch(アダム・ヤウク)1981年〜2012年/1964年8月5日〜2012年5月4日
ボーカル/ギターAdam “Ad-Rock” Horovitz(アダム・ホロヴィッツ)1982年〜2012年
ギター(オリジナルメンバー)John Berry(ジョン・ベリー)1981〜1982年/2016年没
ドラムス(オリジナルメンバー)Kate Schellenbach(ケイト・シェレンバック)1981〜1984年
DJ(サポート)Mix Master Mike(ミックス・マスター・マイク)1998年〜
キーボード(サポート)Money Mark(マネー・マーク)1992年〜
パーカッション(サポート)Eric Bobo(エリック・ボボ)1992〜1998年

3人はそれぞれマイクを握り、フレーズを奪い合うように交代していくのが持ち味です。低く粘るMCA、甲高く跳ねるAd-Rock、その中間で全体をまとめるMike D。同じ小節のなかで声質がころころ入れ替わるあの感覚は、他のグループではなかなか味わえません。

サポートメンバーの存在も欠かせません。『Check Your Head』から加わったキーボードのMoney Markは、バンド編成でのBeastie Boysの音を決定づけた人物。1998年からはDMCワールドDJ選手権を制したMix Master Mikeが正式に参加し、ターンテーブルが音の主役に躍り出ました。なお1984年に外されたKate Schellenbachは、のちにLuscious Jacksonを結成し、皮肉にもBeastie Boys自身のレーベルGrand Royalから作品を発表しています。

数字で見るBeastie Boys

全米でのレコード総売上は2,600万枚以上。ビルボード200で1位を獲得したアルバムは『Licensed to Ill』『Ill Communication』『Hello Nasty』『To the 5 Boroughs』の4枚にのぼります。デビュー作『Licensed to Ill』は2015年にRIAAのダイヤモンド認定(1,000万枚)を受けました。

グラミー賞は3度受賞しています。1999年に『Intergalactic』で最優秀ラップ・パフォーマンス(デュオ/グループ)、同じ年に『Hello Nasty』で最優秀オルタナティヴ・ミュージック・アルバム。ラップのグループがオルタナティヴ部門で受賞するという事実が、彼らの立ち位置をよく表しています。さらに2008年には全編インストの『The Mix-Up』が最優秀ポップ・インストゥルメンタル・アルバムを受賞しました。

そして2012年4月14日、ロックの殿堂入りを果たします。ヒップホップのアクトとしては3組目の殿堂入りでした。闘病中だったAdam Yauchは式に出席できず、その3週間後に世を去っています。

Beastie Boysのおすすめ曲・アルバム

それでは、デビュー作から順番におすすめの曲を紹介していきます。スタジオアルバムは全8枚。アルバムごとに音の作り方がまるで違うので、並べて聴くと変化の大きさに驚くはずです。

1st Album『Licensed to Ill』(1986年)

1986年11月15日リリース。プロデュースはRick Rubin、録音はニューヨークのChung King Studiosで行われました。ハードロックのギターリフとドラムマシンの上で3人が叫び合う、当時としては前例のないスタイルです。

ビルボード200で5週連続1位。ラップのアルバムがアメリカの総合チャートで1位を獲ったのはこれが初めてで、全英でも7位に入りました。2015年にはRIAAのダイヤモンド認定を受けています。

1987年のツアーは騒動続きで、5月30日のリヴァプール公演では客席が暴動になり、Ad-Rockが暴行容疑で逮捕される事態にまで発展しました。良くも悪くも「悪ガキ」のイメージを決定づけた一枚です。

『(You Gotta) Fight for Your Right (To Party!)』

1986年12月リリース。ビルボード・ホット100で7位、全英11位を記録した彼ら最大のヒット曲です。ギターソロを弾いているのは、当時同じRick Rubinのもとで『Reign in Blood』を作っていたスレイヤーのKerry King。クレジットはされていません。

ミュージックビデオは、パーティーに乗り込んで場をめちゃくちゃにするという内容で、グラムメタルのパロディでもあります。本人たちは後年、この曲があまりに一人歩きしたことに複雑な思いを語っていますが、ヒップホップをロックのフィールドに持ち込んだ一曲という意味では、歴史的な転換点でした。

『No Sleep till Brooklyn』

1987年3月1日リリース、全英14位。タイトルはモーターヘッドのライブ盤『No Sleep ‘til Hammersmith』のもじりです。ここでもKerry Kingがギターを弾き、ミュージックビデオにも本人が登場します。

ヘヴィメタルのリフに乗せて「ブルックリンに着くまで寝ない」と叫ぶだけの曲——なのですが、ラップとメタルの接続という点では後のミクスチャー勢すべての原型です。ライブでの定番曲でもありました。

『Brass Monkey』

1987年1月5日リリース、ビルボード・ホット100で48位。ゴールド認定を受けています。「ブラス・モンキー」はカクテルの名前で、歌詞はそれを飲んで浮かれるという他愛のない内容です。

ホーンのループとコール&レスポンスだけで成立してしまう、シンプルさの極み。ロック色の強いアルバムのなかで、この曲はいちばん素直にヒップホップです。パーティーで鳴らすなら真っ先に候補に挙がる一曲。

収録曲

  1. Rhymin & Stealin
  2. The New Style
  3. She's Crafty
  4. Posse in Effect
  5. Slow Ride
  6. Girls
  7. Fight for Your Right
  8. No Sleep till Brooklyn
  9. Paul Revere
  10. Hold It Now, Hit It
  11. Brass Monkey
  12. Slow and Low
  13. Time to Get Ill

2nd Album『Paul’s Boutique』(1989年)

1989年7月25日リリース。Capitol Recordsに移籍して発表された2作目で、プロデュースはBeastie BoysとThe Dust Brothers、そしてエンジニアのMario Caldato Jr.です。

最大の特徴は、ほぼ全編がサンプリングで構築されていること。使われた曲は105にのぼり、最後の組曲だけで24種類のサンプルが重なっています。権利処理のコストが今ほど高くなかった時代だからこそ可能だった作品で、同じものを今から作るのはほぼ不可能だと言われます。

ビルボード200で14位と、前作の勢いから見れば商業的には失速。しかし時間が経つにつれて評価が高まり、ピッチフォークは「サンプリングという技法における金字塔」と評しました。ジャケットに写っているマンハッタン、ラドロー通りとリヴィントン通りの交差点は、2023年9月9日に「Beastie Boys Square」と正式に命名されています。

『Hey Ladies』

アルバムからの先行シングル。ビルボード・ホット100で36位、モダンロック・チャートで18位を記録しました。カウベルとファンクのベースラインが延々と回り続ける、70年代ディスコへの目配せに満ちた曲です。

ミュージックビデオもまた70年代のディスコを再現したもので、衣装から画質までとことん作り込まれています。前作のロック路線から一転、「サンプリングで踊らせる」方向へ舵を切ったことがひと聴きで分かる曲。このアルバムの入り口として最適です。

『Shake Your Rump』

アルバムの実質的な幕開けを飾る一曲。シン・リジィ『Johnny the Fox Meets Jimmy the Weed』、Funky 4 + 1『That’s the Joint』、シュガーヒル・ギャング『8th Wonder』など、出自のまるで違う断片がつなぎ合わされています。

3人が次々にマイクを受け渡していくラップの応酬も見事で、Beastie Boysの「かけ合い」という武器がもっとも鮮やかに出た曲のひとつ。ヘッドフォンで、鳴っている音を1つずつ数えるように聴くのがおすすめです。

『Shadrach』

1989年10月30日リリースの2枚目のシングル。スライ&ザ・ファミリー・ストーン『Loose Booty』、Black Oak Arkansas『Hot and Nasty』、トラブル・ファンク『Say What』などをサンプリングしています。

ミュージックビデオは、ライブ映像の1コマ1コマに直接ペイントを施した「アブストラクト・インプレッショニスト・バージョン」。手描きの絵が蠢く映像は、当時のMTVのなかでも異彩を放っていました。曲名は旧約聖書に登場する人物の名前から取られています。

収録曲

  1. To All the Girls
  2. Shake Your Rump
  3. Johnny Ryall
  4. Egg Man
  5. High Plains Drifter
  6. The Sounds of Science
  7. 3-Minute Rule
  8. Hey Ladies
  9. 5-Piece Chicken Dinner
  10. Looking Down the Barrel of a Gun
  11. Car Thief
  12. What Comes Around
  13. Shadrach
  14. Ask for Janice
  15. B-Boy Bouillabaisse

3rd Album『Check Your Head』(1992年)

1992年4月21日、自主レーベルGrand RoyalとCapitolからリリース。ロサンゼルスのG-Son Studiosで録音されました。プロデュースは前作でエンジニアを務めたMario Caldato Jr.です。

この作品の最大の事件は、3人がふたたび楽器を手に取ったこと。Mike Dがドラム、MCAがベース、Ad-Rockがギターを担当し、初期のハードコア時代以来のバンド編成に戻りました。ここから常連となるキーボードのMoney Markも初参加しています。

ビルボード200で10位、アメリカで2×プラチナ。発表当時の批評は賛否が割れましたが、1999年にスピン誌が「90年代のアルバム」の12位に選ぶなど、時間とともに評価が定着していきました。ヒップホップとパンクとファンクが同じ皿に乗った、彼ららしさの原型がここにあります。

『So What’cha Want』

1992年6月2日リリース。ビルボード・ホット100で93位、モダンロック・チャートでは22位まで上がりました。歪んだオルガンと重いドラムの上で、3人が喉を潰すように吠えるラップロックの決定版です。

ミュージックビデオは魚眼レンズで森のなかを撮影した、色を反転させたような映像。粗い画質そのものが表現になっていて、90年代のMTVを象徴する一本になりました。ライブでの盛り上がり方も別格で、後年まで欠かせない定番曲であり続けています。

『Pass the Mic』

1992年4月7日リリースの先行シングル、全英47位。ジャズ・フルート奏者James Newtonの『Choir』を使ったループの上を、タイトルどおりマイクが3人のあいだを渡っていきます。

「本物かどうかは、その人がやることで決まる」と歌うこの曲は、ロックの出自を持つ彼らなりの自己紹介でもありました。サンプル数を絞り、生演奏の余白を残した音作りは前作と対照的。アルバムの方向性を宣言する一曲です。

『Gratitude』

1992年10月リリース。ファズの効いたベースリフがそのまま曲の顔になっている、アルバムでもっともロック寄りの一曲です。

タイトルは「感謝」。騒がしいだけだった初期から、自分たちの立っている場所を見つめ直す視線が歌詞に出てきます。ラップというより歌に近い発声で、この時期の彼らが表現の幅を広げていたことがよく分かる曲です。

収録曲

  1. Jimmy James
  2. Funky Boss
  3. Pass the Mic
  4. Gratitude
  5. Lighten Up
  6. Finger Lickin' Good
  7. So What'cha Want
  8. The Biz vs. The Nuge
  9. Time for Livin'
  10. Something's Got to Give
  11. The Blue Nun
  12. Stand Together
  13. Pow
  14. The Maestro
  15. Groove Holmes
  16. Live at P.J.'s
  17. Mark on the Bus
  18. Professor Booty
  19. In 3's
  20. Namaste

4th Album『Ill Communication』(1994年)

1994年5月23日リリース。ニューヨークのTin Pan AlleyとロサンゼルスのG-Son Studiosで録音され、前作で手に入れたバンドとしての手触りをさらに押し進めた作品です。

ビルボード200に初登場1位、全英10位。アメリカで3×プラチナを記録しました。ハードコア・パンク、ジャズファンクのインスト、チベット仏教に触れた曲まで20曲が同居していて、統一感のなさそのものが魅力になっています。

90年代のBeastie Boysを1枚選ぶならこれ、という声も多い代表作。まずここから入るのも十分ありです。

『Sabotage』

1994年5月9日リリース。モダンロック・チャートで18位、全英19位。歪んだベースリフとスクラッチ、そして叫びっぱなしのボーカルという、彼らの名刺代わりの一曲です。

有名なのはSpike Jonzeが監督したミュージックビデオ。70年代の刑事ドラマのオープニング映像をまるごと再現し、メンバーが偽名の俳優として登場します。1994年のMTVビデオ・ミュージック・アワードでは最優秀ビデオ賞を含む5部門にノミネートされながら無冠に終わり、授賞式でMCAが壇上に乱入して抗議する一幕もありました。のちに映画『スター・トレック BEYOND』(2016年)で印象的に使われたことでも知られます。

『Sure Shot』

1994年11月14日リリース、全英27位。ジャズ・フルート奏者Jeremy Steigの『Howlin’ For Judy』(1970年)のフレーズが全編を貫く、涼やかなトラックです。

この曲が特別なのは歌詞。MCAが「女性たちに敬意と愛を。取り返しのつかないことを言ってきた」と、初期の女性蔑視的な表現を名指しで謝罪しています。悪ガキだった彼らが大人になったことを示す、キャリアの分岐点のような一節です。フルートのループとあわせて、何度でも聴き返したくなります。

『Root Down』

1995年にEPとしてもリリースされた一曲。ジャズオルガン奏者Jimmy Smithの『Root Down (and Get It)』を下敷きにした、跳ねるようなグルーヴが持ち味です。

ライブでの爆発力が高く、リミックスを収めたEPはクラブでも重宝されました。『Sabotage』のような轟音ではない、ヒップホップとしてのBeastie Boysを味わいたいときはこの曲です。

収録曲

  1. Sure Shot
  2. Tough Guy
  3. B-Boys Makin' with the Freak Freak
  4. Bobo on the Corner
  5. Root Down
  6. Sabotage
  7. Get It Together (feat. Q-Tip)
  8. Sabrosa
  9. The Update
  10. Futterman's Rule
  11. Alright Hear This
  12. Eugene's Lament
  13. Flute Loop
  14. Do It (feat. Biz Markie)
  15. Ricky's Theme
  16. Heart Attack Man
  17. The Scoop
  18. Shambala
  19. Bodhisattva Vow
  20. Transitions

5th Album『Hello Nasty』(1998年)

1998年7月6日にヨーロッパ、7月14日にアメリカでリリース。ロサンゼルスのG-Son Studiosと、ニューヨークのOscilloscope Laboratoriesで録音されました。

大きな変化は、DMCワールドDJ選手権を制したMix Master Mikeの正式加入です。ターンテーブルが前面に出たことで、音は一気にエレクトロ寄りに。アメリカ、イギリス、ドイツ、オーストラリア、ニュージーランドなど各国で1位を獲得し、初週売上は68万1,000枚を記録しました。

第41回グラミー賞では最優秀オルタナティヴ・ミュージック・アルバムと、『Intergalactic』での最優秀ラップ・パフォーマンス(デュオ/グループ)の2冠。Ad-Rockは2018年の自伝『Beastie Boys Book』で、この作品をグループの「ベスト」だと語っています。

『Intergalactic』

1998年6月22日リリース。ビルボード・ホット100で28位、全英5位、モダンロック・チャートで4位を記録した、国際的には彼ら最大のヒットです。ボコーダーで加工した声と、ロボットのようなビートが耳から離れません。

ミュージックビデオはMCAがNathanial Hörnblowér名義で監督し、東京の渋谷駅・新宿駅で撮影されました。日本の怪獣映画と特撮ヒーロー番組へのオマージュで、メンバーは日本の作業員の格好で登場します。1999年のMTVビデオ・ミュージック・アワードで最優秀ヒップホップ・ビデオ賞を受賞しました。

『Body Movin’』

1998年10月26日リリース。モダンロック・チャート15位、全英15位。跳ねるビートとスクラッチが延々と続く、フロア向けのトラックです。

ミュージックビデオはイタリアのスパイ映画をパロディにしたもの。ファットボーイ・スリムによるリミックスも制作され、こちらはクラブで広く流通しました。ダンスミュージックとしてのBeastie Boysを一番わかりやすく楽しめる曲です。

『Three MC’s and One DJ』

1999年5月8日に『Remote Control』との両A面シングルとしてリリース。タイトルどおり、3人のMCと1人のDJだけで成立する曲です。

ミュージックビデオはスタジオでの一発録りのようなライブ映像で、Mix Master Mikeのターンテーブル捌きがそのまま映像の主役になっています。飾りを全部削ったときに何が残るのか——加入したばかりのDJを迎えた彼らの答えが、この4分間に詰まっています。

収録曲

  1. Super Disco Breakin'
  2. The Move
  3. Remote Control
  4. Song for the Man
  5. Just a Test
  6. Body Movin'
  7. Intergalactic
  8. Sneakin' Out the Hospital
  9. Putting Shame in Your Game
  10. Flowin' Prose
  11. And Me
  12. Three MC's and One DJ
  13. The Grasshopper Unit (Keep Movin')
  14. Song for Junior
  15. I Don't Know
  16. The Negotiation Limerick File
  17. Electrify
  18. Picture This
  19. Unite
  20. Dedication
  21. Dr. Lee, PhD
  22. Instant Death

6th Album『To the 5 Boroughs』(2004年)

2004年6月15日リリース(アメリカでは6月14日)。2003年2月から2004年3月にかけて、ニューヨーク・トライベッカのOscilloscope Laboratoriesで録音されました。

タイトルの「5 Boroughs」はニューヨーク市を構成する5つの行政区のこと。同時多発テロを経た自分たちの街への思いと、当時の政治への苛立ちが全編を貫いています。音はドラムマシンとサンプルだけの簡素な作りで、80年代のヒップホップへの回帰でもありました。

ビルボード200で3作連続の初登場1位、全英2位。ローリング・ストーン誌は「速く、可笑しく、そして考えさせる、驚くべきバランス感覚」と評しました。

『Ch-Check It Out』

2004年5月3日リリースの先行シングル。ビルボード・ホット100で68位、全英8位、そしてモダンロック・チャートでは1位を獲得しました。カナダでもシングルチャート1位です。

正式リリースに先立ち、ドラマ『The O.C.』で流れたことで話題に。ミュージックビデオはMCAがNathanial Hörnblowér名義で監督し、宇宙船やコスチュームが次々に出てくる賑やかな映像です。ブランクを感じさせない、まっすぐな「おかえりなさい」の一曲でした。

『Triple Trouble』

2004年7月リリースの2枚目のシングル。モダンロック・チャートで11位、全英37位を記録しました。

タイトルどおり、3人が代わる代わる飛び出してくる軽快なトラック。細かいことを考えず、オールドスクールなビートの上を跳ね回る楽しさがあります。アルバムの重いテーマの合間にあって、このグループ本来の軽やかさを思い出させてくれる曲です。

『An Open Letter to NYC』

2004年11月リリースの4枚目のシングルで、アルバム中もっとも長い4分18秒。タイトルは「ニューヨークへの公開書簡」という意味です。

ブルックリン、クイーンズ、ブロンクス、スタテンアイランド、マンハッタン——5つの区の名前を呼びながら、テロを経てなお立っている街への愛情をまっすぐ歌います。ミュージックビデオにもニューヨークの記録映像がふんだんに使われました。ふざけ倒してきたグループが、真顔で街の名前を呼ぶ。このアルバムの核心はここにあります。

収録曲

  1. Ch-Check It Out
  2. Right Right Now Now
  3. 3 the Hard Way
  4. It Takes Time to Build
  5. Rhyme the Rhyme Well
  6. Triple Trouble
  7. Hey Fuck You
  8. Oh Word?
  9. That's It That's All
  10. All Lifestyles
  11. Shazam!
  12. An Open Letter to NYC
  13. Crawlspace
  14. The Brouhaha
  15. We Got The

7th Album『The Mix-Up』(2007年)

2007年6月26日リリース。全編インストゥルメンタルという、キャリアでも異色の一枚です。ラップは一切ありません。

『Check Your Head』以降のアルバムに散りばめられてきたインスト曲——あの手触りだけで1枚を通したらどうなるか、という実験。オルガン、ベース、ドラム、ギターが淡々と絡み合う、夜のドライブに似合うファンクとダブの世界です。

ビルボード200では15位と、アメリカでは彼らの最低順位。それでも第50回グラミー賞で最優秀ポップ・インストゥルメンタル・アルバムを受賞しました。「ラップグループ」という枠に収まらない彼らの姿を象徴する作品です。

『Off the Grid』

アルバムからシングルカットされた一曲。抑えたギターのカッティングとオルガン、そして粘るベースが、余白をたっぷり取りながら進んでいきます。

声がないぶん、3人の演奏そのものに耳が向く構成。ハードコア・パンクのバンドとして始まった彼らが、25年かけてここまで来たのだと考えると感慨深い一曲です。作業中のBGMにもよく馴染みます。

収録曲

  1. B for My Name
  2. 14th St. Break
  3. Suco de Tangerina
  4. The Gala Event
  5. Electric Worm
  6. Freaky Hijiki
  7. Off the Grid
  8. The Rat Cage
  9. The Melee
  10. Dramastically Different
  11. The Cousin of Death
  12. The Kangaroo Rat

8th Album『Hot Sauce Committee Part Two』(2011年)

2011年5月3日リリース。もともとは2009年9月15日に『Part One』を出し、2部作にする計画でした。しかし同年7月にMCAの耳下腺がんが判明して延期。結果として2部構成の構想は取り下げられ、『Part Two』だけが世に出ることになりました。

ビルボード200で2位、R&B/ヒップホップ・アルバム、ラップ・アルバム、ロック・アルバムの各チャートで1位。メタクリティックのスコアは83と高く、「勢いのあるラップ、実験的なプロダクション、そして当世のヒップホップの流行を意に介さない姿勢」が称賛されました。

結果的にこれが最後のアルバムになります。翌2012年5月4日、アルバムの発売からちょうど1年と1日後に、Adam Yauchが亡くなりました。

『Make Some Noise』

2011年4月11日リリースの先行シングル。ビルボードのオルタナティヴ・ソングスで7位、ロック・ソングスで15位を記録しました。レコード・ストア・デイに7インチ盤も限定発売され、B面にはパッション・ピットによるリミックスが収められています。

ミュージックビデオは『Fight for Your Right (Revisited)』という短編映画として制作された話題作。1986年の自分たちを演じる若い3人組と、未来から来た年老いた3人組が街で鉢合わせするという内容で、ハリウッドの豪華な面々が出演しています。過去の代表曲を自分たちで笑い飛ばす、最高に洒落た自己批評でした。

『Don’t Play No Game That I Can’t Win』

2011年7月26日リリース、Santigoldをフィーチャーした一曲。R&B/ヒップホップ・ソングスで80位に入り、このチャートに彼らの名前が載るのは24年ぶりのことでした。

レゲエとダブの質感をまとった、ゆったりしたトラック。Santigoldの歌声が入ることで、アルバムのなかでも一段と風通しのいい仕上がりになっています。騒がしいだけではない彼らの引き出しの多さを、最後の作品で改めて見せてくれました。

収録曲

  1. Make Some Noise
  2. Nonstop Disco Powerpack
  3. OK
  4. Too Many Rappers (New Reactionaries Version) (feat. Nas)
  5. Say It
  6. The Bill Harper Collection
  7. Don't Play No Game That I Can't Win (feat. Santigold)
  8. Long Burn the Fire
  9. Funky Donkey
  10. The Larry Routine
  11. Tadlock's Glasses
  12. Lee Majors Come Again
  13. Multilateral Nuclear Disarmament
  14. Here's a Little Something for Ya
  15. Crazy Ass Shit
  16. The Lisa Lisa/Full Force Routine

日本とBeastie Boys

Beastie Boysを語るうえで、日本との縁は外せません。最大の象徴が『Intergalactic』のミュージックビデオです。MCAがNathanial Hörnblowér名義で監督したこの映像は、渋谷駅と新宿駅で撮影され、巨大ロボットと怪獣が東京で戦うという筋書き。日本の怪獣映画と『ジャイアントロボ』『スーパー戦隊』シリーズへの、愛情たっぷりのオマージュになっています。作業着姿でトンネルを踊りながら進む3人の映像は、世界中でこのバンドのイメージそのものになりました。

来日公演では、2004年のSUMMER SONICが記憶されています。8月7日の大阪・オープンエアステージ、8月8日の千葉・マリンステージと、5周年を迎えた同フェスのヘッドライナーとして出演。その熱を受けて単独公演も実現し、10月7日には来日記念EP『Right Right Now Now』が発売されました。

そして2007年7月28日、FUJI ROCK FESTIVALのヘッドライナーとして出演。フジロックへの登場はこのときが初めてでした。『The Mix-Up』を出した直後という時期もあり、バンド編成の演奏とターンテーブルのセットを行き来する構成は、この日ならではのものだったと語り継がれています。

もうひとつ触れておきたいのが、MCAの活動家としての顔です。チベット仏教に帰依した彼は、チベット独立を支援するミラレパ基金を設立し、1996年にサンフランシスコのゴールデン・ゲート・パークで第1回チベタン・フリーダム・コンサートを開催しました。10万人以上を集めたこのイベントは、その後も各地で開かれています。また2002年には映画会社Oscilloscope Laboratoriesを設立し、インディペンデント映画の配給にも取り組みました。自分たちの曲を広告に使わせないという遺志を残したことでも知られています。

グループの歩みは、2018年の自伝『Beastie Boys Book』と、Spike Jonzeが手がけた2020年のドキュメンタリー『Beastie Boys Story』にまとめられています。2023年には、『Paul’s Boutique』のジャケットに写る交差点が「Beastie Boys Square」と命名されました。

まとめ|まずはこの3曲から

Beastie Boysは、パンクバンドとして始まり、ラップで頂点に立ち、サンプリングを芸術にし、また楽器を握り、最後はインストのアルバムでグラミーを獲りました。ジャンルの境目を越えたというより、そもそも境目を気にしていなかった3人組です。

最初に聴くなら、この3曲をおすすめします。

  • 『Sabotage』(1994年)… 轟音とスクラッチ、そして刑事ドラマのMV。まずはこれを。
  • 『Intergalactic』(1998年)… 東京で撮影された怪獣MVと、忘れられないボコーダー。
  • 『Shake Your Rump』(1989年)… サンプリングの魔術。ヘッドフォン推奨です。

アルバムから入るなら、まずは『Ill Communication』(1994年)。ラップ、ロック、インストが一枚に同居していて、このグループの幅がそのまま分かります。そこで「もっと音の作り込みを聴きたい」と思ったら『Paul’s Boutique』(1989年)へ、「もっと踊れるものを」なら『Hello Nasty』(1998年)へ。バンドとしての生演奏が好みなら『Check Your Head』(1992年)が待っています。

90年代の洋楽や、同時代のヒップホップもあわせてどうぞ。