2023年にヒットした洋楽をまとめました。
カントリーが年間1位を獲り、映画『バービー』のサウンドトラックがチャートを埋め、テイラー・スウィフトのツアーが4年前の曲を1位に押し上げた年。ヒットの生まれ方がますます多様になった1年でした。
POP、HIP HOP、R&B、カントリー、ラテン、アフロビーツ、K-POPまで、ジャンルを問わず幅広く紹介します。当時よく聴いていた人には懐かしく、知らない世代には発見があるはずです。
並び順はおおむねヒットの規模順です。1曲ずつ動画を載せているので、上から流していけばそのまま2023年のプレイリストとして使えます。気になった曲から聴いてみてください。
2023年の洋楽ヒット曲
Morgan Wallen – Last Night
COUNTRY
2023年の年間チャート1位。アルバム『One Thing at a Time』からのシングルで、酔って喧嘩した夜のことを歌ったカントリーです。
ビルボードのシングルチャートで通算16週にわたって1位を記録。ソロの男性アーティストがカントリーの曲で全米1位を獲るのは、1981年のエディ・ラビット以来のことでした。カントリーがポップチャートの中心に居座る流れは、この曲から本格化します。
Miley Cyrus – Flowers
POP / DISCO
2023年1月にリリースされ、そのまま年間を通して聴かれ続けた1曲。「自分で自分に花を買える」と歌う、独立宣言のようなディスコポップです。
IFPIの集計で2023年に世界で最も売れたシングルとなり、ビルボードのシングルチャートでも通算8週1位。翌年のグラミー賞で最優秀レコード賞を受賞しました。
SZA – Kill Bill
R&B
アルバム『SOS』からのシングル。柔らかいメロディに乗せて、かなり物騒な内容を淡々と歌うギャップが強烈です。
ビルボードのシングルチャートで1位を獲得。アルバム『SOS』も長期にわたって全米1位を守り、SZAをトップアーティストの位置に押し上げました。
Metro Boomin, The Weeknd, 21 Savage – Creepin’
HIP HOP / R&B
マリオ・ワイナンズの『I Don’t Wanna Know』(2004年)を下敷きにした1曲。プロデューサーのMetro Boominによるアルバム『HEROES & VILLAINS』に収録されています。
ビルボードのシングルチャートで最高3位。ザ・ウィークエンドの歌と21 Savageのラップが交互に来る構成が心地よく、長く聴かれ続けました。
Rema, Selena Gomez – Calm Down
AFROBEATS / POP
ナイジェリアのレマによるアフロビーツの曲に、セレーナ・ゴメスが加わったリミックス。
ビルボードのシングルチャートで3位まで上昇し、アフリカのアーティストによる曲としては歴代最高クラスの成績となりました。アフロビーツが世界のポップスの一部になったことを決定づけた1曲です。
The Weeknd, Ariana Grande – Die For You (Remix)
R&B / POP
2016年のアルバム『Starboy』の収録曲が、TikTokをきっかけに6年越しでヒット。そこにアリアナ・グランデを迎えたリミックスが投入されました。
結果としてビルボードのシングルチャートで1位を獲得。古い曲が時間差でチャートの頂点に立つという、この時期らしい現象です。
Luke Combs – Fast Car
COUNTRY
トレイシー・チャップマンが1988年に発表した名曲のカバー。原曲をほとんど変えず、まっすぐに歌っています。
ビルボードのシングルチャートで2位まで上昇。この曲でトレイシー・チャップマンは作詞作曲者としてCMAアワードの最優秀楽曲賞を受賞し、黒人として史上初の同賞受賞者となりました。
SZA – Snooze
R&B
同じく『SOS』から。ゆったりとしたビートに、離れたくないという気持ちを重ねた1曲です。
リリースから時間をかけて伸び続け、ビルボードのシングルチャートで最高2位。翌年のグラミー賞では最優秀R&Bソング賞を受賞しました。
David Guetta & Bebe Rexha – I’m Good (Blue)
Electro/Dance
Eiffel 65の『Blue (Da Ba Dee)』(1999年)をそのまま使ったダンストラック。誰もが知っているメロディをEDMに載せ替えました。
ビルボードのシングルチャートで最高4位。クラブでもフェスでも定番となり、2023年のダンスミュージックを代表する曲になりました。
Drake, 21 Savage – Rich Flex
HIP HOP/RAP
ドレイクと21 Savageの共作アルバム『Her Loss』の1曲目。冒頭の掛け合いがSNSで大量にネタにされました。
ビルボードのシングルチャートで2位まで上昇。アルバムも全米1位を獲得しています。
Bailey Zimmerman – Rock and A Hard Place
COUNTRY
イリノイ州出身、TikTokから出てきたカントリーシンガーのヒット曲。関係が壊れていく過程を、感情を抑えずに歌います。
ビルボードのシングルチャートで最高11位。2023年のカントリー勢の層の厚さを示す1曲です。
Chris Brown – Under The Influence
R&B
2019年のアルバム『Indigo』の収録曲が、TikTok経由で3年越しにヒットしました。
ビルボードのシングルチャートで最高10位。イギリスでは特に強く支持され、長くチャートに残りました。
Taylor Swift – Cruel Summer
POP
2019年のアルバム『Lover』の収録曲。長らくファンから「なぜシングルにしないのか」と言われ続けてきた曲です。
2023年の「The Eras Tour」のセットリストに入ったことで一気に火がつき、4年越しでシングル化。ビルボードのシングルチャートで4週にわたって1位を獲得しました。
PinkPantheress, Ice Spice – Boy’s a liar Pt. 2
POP / HIP HOP
イギリスのピンクパンサレスの曲に、ニューヨークのアイス・スパイスが加わったバージョン。2分ちょっとで駆け抜けます。
ビルボードのシングルチャートで最高3位。短尺でループする曲がTikTokで強い、という傾向を象徴していました。
Toosii – Favorite Song
R&B / HIP HOP
ノースカロライナ出身のトゥーシによるブレイク曲。ギターの弾き語りのようなトラックに、素直なラブソングが乗ります。
ビルボードのシングルチャートで最高7位まで上昇しました。
Miguel – Sure Thing
R&B
2010年のデビューアルバムに入っていた曲が、13年後にTikTokでよみがえりました。
2023年にビルボードのシングルチャートで最高11位を記録。古い曲が再発見される流れの、極端な例のひとつです。
Lil Durk – All My Life ft. J. Cole
HIP HOP/RAP
シカゴ出身のリル・ダークが、J・コールを迎えた1曲。育った環境と、そこから抜け出すまでを振り返る内容です。
子どもたちの合唱が入るフックが印象的で、ビルボードのシングルチャートで最高2位まで上昇しました。
Eslabon Armado, Peso Pluma – Ella Baila Sola
LATIN / 地域メキシコ音楽
「コリード・トゥンバード」と呼ばれる、地域メキシコ音楽を現代化したスタイルの1曲。アコースティックギターとチューバの生音で進みます。
年間チャートで26位に入り、地域メキシコ音楽としては異例の成績を残しました。2023年は、このジャンルがアメリカのメインストリームに一気に流れ込んだ年でもあります。
Taylor Swift ft. Ice Spice – Karma
POP
アルバム『Midnights』の収録曲に、アイス・スパイスを迎えたリミックス。
「カルマは私の味方」と歌う軽やかな曲で、ビルボードのシングルチャートで最高2位。この年のテイラー・スウィフトの勢いをそのまま示しています。
Lil Uzi Vert – Just Wanna Rock
HIP HOP / JERSEY CLUB
ニュージャージー発の「ジャージークラブ」のビートを取り入れた1曲。歌詞はほとんどなく、ひたすらビートで押し切ります。
TikTokのダンスで爆発し、ビルボードのシングルチャートで最高11位。ジャージークラブが全国区になるきっかけになりました。
Beyoncé – CUFF IT
DANCE / FUNK
アルバム『RENAISSANCE』からのシングル。ナイル・ロジャースがギターで参加した、70年代ディスコ直系のファンクです。
TikTokでダンスが流行したことで伸び続け、ビルボードのシングルチャートで最高6位。翌年のグラミー賞では最優秀R&Bソング賞を受賞しました。
Olivia Rodrigo – vampire
POP ROCK
2ndアルバム『GUTS』の先行シングル。静かなピアノのバラードから、後半で一気にロックへ転調します。
初登場でビルボードのシングルチャート1位を獲得。デビュー作の衝撃が一度きりではなかったことを証明しました。
Gunna – fukumean
HIP HOP/RAP
2分ちょっとの短い曲。逮捕・釈放を経て復帰したガンナが、周囲の雑音に対して言い返す内容です。
ビルボードのシングルチャートで最高4位。TikTokでの拡散も後押しになりました。
Coi Leray – Players
HIP HOP/RAP
Grandmaster Flash & The Furious Fiveの『The Message』(1982年)をサンプリングした1曲。
「遊んでるのは男だけじゃない」という内容で、ビルボードのシングルチャートで最高12位まで上昇しました。
Jelly Roll – Need A Favor
COUNTRY / ROCK
テネシー州出身、服役経験を公言しているジェリー・ロールの1曲。「困ったときだけ神に祈る自分」を歌います。
カントリーとロックの中間にあるサウンドで、ビルボードのシングルチャートで最高13位。2023年のカントリー勢の多様さを示す存在です。
Dua Lipa – Dance The Night
POP / DISCO
映画『バービー』のために書かれた曲。マーク・ロンソンとの共作で、前作『Future Nostalgia』の延長にあるディスコポップです。
ビルボードのシングルチャートで最高6位。映画の大ヒットとともに、この年の夏を象徴する曲になりました。
Billie Eilish – What Was I Made For?
POP / バラード
同じく映画『バービー』から。「私は何のために作られたんだろう」という問いを、ピアノとささやき声だけで繰り返します。
翌年のグラミー賞で最優秀楽曲賞を、アカデミー賞で歌曲賞を受賞。映画のための曲がグラミー賞の最優秀楽曲賞を獲るのは、セリーヌ・ディオン『My Heart Will Go On』以来のことです。
Nicki Minaj & Ice Spice – Barbie World (with Aqua)
HIP HOP/RAP
アクアの『Barbie Girl』(1997年)をそのまま使った、映画『バービー』のサウンドトラック曲。
ビルボードのシングルチャートで最高7位。『Dance The Night』『What Was I Made For?』とあわせて、映画のサウンドトラックがチャートを席巻した年でした。
Doja Cat – Paint The Town Red
HIP HOP / POP
ディオンヌ・ワーウィックの『Walk On By』をサンプリングした1曲。ポップスターであることへの周囲の期待を、自分から突き放す内容です。
ビルボードのシングルチャートで1位を獲得。ドジャ・キャットにとって初のソロでの全米1位となりました。
Jung Kook – Seven (feat. Latto)
K-POP / POP
BTSのジョングクによるソロシングル。ラトーを迎えた、UKガラージの質感を取り入れた曲です。
初登場でビルボードのシングルチャート1位を獲得。BTSのメンバーがソロでこの位置に立ったことは、グループ活動休止期間中の大きな出来事になりました。
FIFTY FIFTY – Cupid
K-POP / POP
韓国の4人組グループによる1曲。英語バージョンの、さらに速度を上げた「Twin Ver.」がTikTokで爆発しました。
ビルボードのシングルチャートで最高17位。中小規模の事務所のグループが世界的ヒットを出したことで、大きな話題になりました。
RAYE, 070 Shake – Escapism.
R&B / Alternative
イギリスのレイによる、7分近い長さの原曲を切り詰めた1曲。レーベルとの契約に長く苦しんだ末、独立して発表した作品です。
全英シングルチャートで1位を獲得。翌年のブリット・アワードでは1夜で6部門を受賞し、史上最多記録を打ち立てました。
Stephen Sanchez – Until I Found You
POP / ROCK
50〜60年代のドゥーワップをそのまま持ってきたようなラブソング。結婚式の定番としてTikTokで広まりました。
ビルボードのシングルチャートで最高23位ながら、年間チャートで50位に入るロングヒットとなっています。
JVKE – golden hour
POP
ピアノのフレーズが印象的な1曲。作る過程をTikTokで公開しながら完成させるという、いまらしい作られ方をしました。
ビルボードのシングルチャートで最高10位。年間チャートでも41位に入っています。
2023年の洋楽シーン総括
2023年を一言でまとめるなら、カントリーがポップの中心に来た年でした。年間チャート1位はMorgan Wallen(モーガン・ウォレン)の『Last Night』。ソロの男性アーティストがカントリーで全米1位を獲るのは1981年以来のことです。Luke Combs、Bailey Zimmerman、Jelly Roll、Zach Bryanと、上位に並ぶカントリー勢の層も一気に厚くなりました。
同じ流れで地域メキシコ音楽も台頭します。Eslabon ArmadoとPeso Pluma(ペソ・プルーマ)の『Ella Baila Sola』が年間26位に入り、アコースティックギターとチューバの生音がアメリカのチャートに並ぶという光景が生まれました。
映画の存在も大きい年でした。『バービー』のサウンドトラックからは『Dance The Night』『Barbie World』『What Was I Made For?』の3曲がヒット。とりわけBillie Eilish(ビリー・アイリッシュ)の『What Was I Made For?』は、翌年のグラミー賞の最優秀楽曲賞とアカデミー賞の歌曲賞を制しました。
そしてTaylor Swift(テイラー・スウィフト)です。この年に始まった「The Eras Tour」は、セットリストに入れただけで4年前の『Cruel Summer』を全米1位に押し上げました。ツアーそのものが史上最高の興行収入を記録し、開催都市の経済まで動かすという現象になっています。
古い曲の再浮上も止まりません。2016年の『Die For You』、2010年の『Sure Thing』、2019年の『Under The Influence』が、いずれもTikTok経由で数年越しにヒットしました。前年のKate Bushで見えた流れが、完全に日常になった年です。
世界の広がりという点では、ナイジェリアのRema(レマ)の『Calm Down』でアフロビーツが全米3位に到達し、韓国からはJung Kook(ジョングク)の『Seven』が初登場1位、FIFTY FIFTYの『Cupid』もヒットしました。英語圏の外から来る曲が、もう例外ではなくなっています。


















