2020年にヒットした洋楽をまとめました。
新型コロナウイルスでライブもツアーも止まった年。それでも音楽は止まらず、むしろTikTokやストリーミングを通じて、これまでとは違う形でヒットが生まれ続けた1年でした。
POP、HIP HOP、R&B、ラテン、K-POP、カントリー、ロックまで、ジャンルを問わず幅広く紹介します。当時よく聴いていた人には懐かしく、知らない世代には発見があるはずです。
並び順はおおむねヒットの規模順です。1曲ずつ動画を載せているので、上から流していけばそのまま2020年のプレイリストとして使えます。気になった曲から聴いてみてください。
2020年の洋楽ヒット曲
The Weeknd – Blinding Lights
POP
2020年を代表する1曲。80年代のシンセポップをそのまま現代に持ってきたような、疾走感のあるトラックです。
ビルボードのシングルチャートで1位を獲得しただけでなく、トップ10圏内に丸1年間居続けるという前例のない記録を残しました。後にビルボードから「Hot 100史上最も成績の良かった曲」に認定されています。
アルバム『After Hours』とあわせて、ザ・ウィークエンドのキャリアを決定づけた作品になりました。
Roddy Ricch – The Box
HIP HOP/RAP
「イーッ、アーッ」という独特のアドリブが一度聴いたら耳から離れない1曲。デビューアルバム『Please Excuse Me for Being Antisocial』の収録曲です。
シングルとして正式に切られる前からストリーミングで伸び続け、ビルボードのシングルチャートで11週にわたって1位を守りました。ロディー・リッチは、亡くなったNipsey Hussleのグラミー賞受賞曲にも参加しています。
DaBaby – ROCKSTAR feat. Roddy Ricch
HIP HOP/RAP
前年に『Suge』でブレイクしたダベイビーが、ロディー・リッチを迎えた大ヒット曲。ビルボードのシングルチャートで1位を獲得しました。
ジョージ・フロイド事件をきっかけに全米で広がった抗議運動のさなかにリリースされ、警察暴力に触れたBET Awardsでのパフォーマンスも大きな反響を呼びました。
Doja Cat – Say So
POP
ロサンゼルス出身のドジャ・キャットのブレイク曲。70年代のディスコとファンクを下敷きにした、踊れるポップソングです。
もとはアルバム『Hot Pink』の収録曲でしたが、TikTokのダンスで火がついて後からシングル化。ニッキー・ミナージュを迎えたリミックスがビルボードのシングルチャート1位に到達し、二人にとって初の全米1位となりました。
Dua Lipa – Don’t Start Now
POP
アルバム『Future Nostalgia』のリードシングル。ディスコのベースラインをそのまま現代のポップに落とし込んだ1曲です。
ビルボードと全英シングルチャートの両方で最高2位を記録し、長く売れ続けました。外に出られない年にダンスフロアの音楽を作り切ったこのアルバムは、翌年のグラミー賞で最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバム賞を受賞しています。
Cardi B – WAP feat. Megan Thee Stallion
HIP HOP/RAP
カーディ・Bとメーガン・ジー・スタリオンによる、2020年で最も議論を呼んだ曲。露骨な性的表現をめぐって賛否が真っ二つに割れました。
一方で、女性が自分の欲望を自分の言葉で語ることへの支持も大きく、Rolling Stone誌などが年間ベストソングの1位に選んでいます。初登場でビルボードのシングルチャート1位を獲得しました。
Megan Thee Stallion – Savage Remix (feat. Beyoncé)
HIP HOP/RAP
TikTokの「Savageチャレンジ」で爆発的に広まった曲に、同郷ヒューストンの大先輩ビヨンセが参加したリミックスです。
ビルボードのシングルチャートで1位を獲得し、メーガンにとって初の全米1位に。翌年のグラミー賞では最優秀ラップ・パフォーマンス賞と最優秀ラップ・ソング賞を受賞しました。
BTS – Dynamite
POP
BTSにとって初の全編英語詞となったシングル。70年代のディスコを思わせる、とにかく明るいポップソングです。
初登場でビルボードのシングルチャート1位を獲得し、韓国のアーティストとして史上初の快挙となりました。外出もライブもままならない状況の中で、聴く人を元気づけるために作られた曲でもあります。
Harry Styles – Watermelon Sugar
POP
ホーンとギターが跳ねるファンク寄りのポップソング。ハリー・スタイルズにとって初のビルボードのシングルチャート1位となりました。
ビーチで大勢が寄り集まって踊るMVは、公開当時に「ソーシャル・ディスタンシング以前に撮影されたもの」という断り書きが添えられました。翌年のグラミー賞では最優秀ポップ・ソロ・パフォーマンス賞を受賞しています。
Harry Styles – Adore You
POP
同じアルバム『Fine Line』からのシングル。ハリー・スタイルズはあのOne Direction(ワン・ダイレクション)のメンバーです。
ワン・ダイレクションは活動休止中ですが、メンバーはそれぞれソロで活動しています。中でもハリー・スタイルズは、70年代ロックを通過したソロアーティストとしての立ち位置を完全に確立しました。
Future – Life Is Good ft. Drake
HIP HOP/RAP
人気ラッパー同士のコラボ曲。前半と後半でビートががらりと変わる構成で、フューチャーとドレイクがそれぞれの持ち場を見せつけます。
MVでは二人が整備工やゴミ収集員として働くという、成功した今の姿とは真逆の設定になっているのが面白いところです。
24kGoldn – Mood ft. iann dior
HIP HOP
ヒップホップとポップパンクを混ぜたような軽やかな1曲。TikTokでバイラルヒットしたことをきっかけに一気に広まりました。
ビルボードのシングルチャートで1位を獲得。ラップとギターロックの距離が縮まっていく、この時期の空気をよく表している曲です。
Lady Gaga, Ariana Grande – Rain On Me
POP
レディー・ガガのアルバム『Chromatica』から、アリアナ・グランデを迎えたダンスナンバー。初登場でビルボードのシングルチャート1位を獲得しました。
「降ってくる雨をそのまま浴びてでも生きていく」という歌詞は、二人がそれぞれ抱えてきたつらい経験を踏まえたもの。翌年のグラミー賞では最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス賞を受賞しています。
Ariana Grande – positions
POP
2020年10月に発売されたアルバム『positions』のリードシングル。トラップのビートに弦とギターを乗せた、落ち着いた質感の曲です。
この曲も初登場1位を獲得。アリアナ・グランデは、ビルボードのシングルチャートに初登場1位で入った曲を5曲持つ史上初のアーティストになりました。
Taylor Swift – cardigan
Alternative / FOLK
ロックダウン中に自宅で作られ、告知からわずか1日で発表されたアルバム『folklore』のリードシングル。それまでのきらびやかなポップから一転して、ピアノと弦だけの静かな曲になっています。
初登場でビルボードのシングルチャート1位を獲得し、アルバムも同時に1位に。『folklore』は翌年のグラミー賞で最優秀アルバム賞を受賞し、テイラー・スウィフトにとって3度目の受賞となりました。
Justin Bieber – Holy ft. Chance The Rapper
POP
ジャスティン・ビーバーがチャンス・ザ・ラッパーを迎えた1曲。信仰と愛を重ねて歌う、ゴスペル寄りの曲調です。
MVでは職を失った労働者を演じており、この年の社会状況がそのまま物語に取り込まれています。
Justin Bieber – Intentions ft. Quavo
POP
アルバム『Changes』からのシングル。参加しているQuavo(クエイヴォ)は、人気ヒップホップトリオMigos(ミーゴス)のメンバーです。
MVはロサンゼルスの女性支援施設で暮らす実在の女性たちを主役にした内容で、収益も同施設に寄付されました。
Justin Bieber – Yummy
POP
約4年ぶりのソロシングルとして発表された1曲。「Yummy」は「おいしい」という意味ですが、ここでは「たまらなく魅力的」といったニュアンスのスラングとして使われています。
アルバム『Changes』の先行シングルで、この年のジャスティン・ビーバーの本格的な活動再開を告げる曲になりました。
Gabby Barrett – I Hope
COUNTRY
ギャビー・バレットはオーディション番組『American Idol』で3位に入って注目された歌手です。
2019年にリリースされた曲が長い時間をかけてじわじわ広がり、この年ビルボードのシングルチャートで3位まで上昇しました。カントリーの女性歌手がここまでヒットするのは久しぶりのことでした。
Jason Derulo & Jawsh 685 – Savage Love
POP / HIP HOP
ニュージーランド出身の10代のプロデューサーJawsh 685が作ったビートに、ジェイソン・デルーロが歌を乗せた曲。もともとはTikTok上で勝手に組み合わされていたものが、正式にリリースされました。
全英シングルチャートで1位を獲得。後にBTSを迎えたリミックスが出て、ビルボードでも1位に到達しています。
SAINt JHN – Roses (Imanbek Remix)
Electro/Dance
2016年にリリースされていた『Roses』を、カザフスタンの当時10代だったプロデューサーImanbekがリミックスしたもの。原曲とはまるで別の曲です。
全英シングルチャートで1位を記録する大ヒットとなり、翌年のグラミー賞では最優秀リミックス・レコーディング賞を受賞しました。
Powfu – death bed (coffee for your head)
HIP HOP/RAP
脱力した歌い方が印象的な、ローファイ寄りのヒップホップ。日本でもよく流れていました。
Powfuはカナダ・バンクーバー出身のアーティスト。イギリスのシンガー、beabadoobeeの曲をサンプリングしていて、この曲もTikTok経由で世界に広まりました。
Drake – Toosie Slide
HIP HOP/RAP
曲の中でダンスの振り付けを説明していくという、TikTokでの拡散を最初から前提にしたような1曲。狙いどおり大量のダンス動画が投稿されました。
MVはドレイク本人が自宅で撮影したもので、マスク姿で誰もいない屋敷の中を歩き回ります。この年の空気がそのまま映像に残っている作品です。
Chris Brown, Young Thug – Go Crazy
R&B
甘い歌声とダンスで人気のクリス・ブラウンが、ヤング・サグと組んだ1曲。
二人の共作ミックステープ『Slime & B』からのシングルで、ビルボードのシングルチャートでは3位まで上昇するロングヒットになりました。
Juice WRLD & Marshmello – Come & Go
HIP HOP / Electro
2019年12月に21歳で亡くなったラッパー、ジュース・ワールドと、人気DJマシュメロによるコラボ曲。
死後に発表されたアルバム『Legends Never Die』に収録されています。同アルバムは全米アルバムチャートで1位を獲得しました。ジュース・ワールドには『Lucid Dreams』『Robbery』などのヒット曲があります。
POP SMOKE – WHAT YOU KNOW BOUT LOVE
HIP HOP/RAP
ニューヨークのブルックリン・ドリルを代表するラッパー、ポップ・スモークの曲。2020年2月に20歳で銃撃を受けて亡くなりました。
この曲は死後に発表されたアルバム『Shoot for the Stars, Aim for the Moon』に収録されたもので、同アルバムは全米アルバムチャートで1位を獲得。ドリルらしいゴツゴツした音とは対照的に、甘いメロディが乗った1曲です。
Billie Eilish – everything i wanted
Alternative
兄フィニアスとの関係を歌った静かな曲。ビリー・アイリッシュが見た悪夢が発想の元になっています。
翌年のグラミー賞で最優秀レコード賞を受賞し、ビリー・アイリッシュは2年連続でこの賞を手にしました。MVは本人が監督しています。
BLACKPINK – How You Like That
K-POP
韓国の4人組ガールズグループBLACKPINKのシングル。重いトラップのビートと、韓国の伝統音楽を思わせる音を組み合わせた1曲です。
MVは公開24時間の再生数で当時の世界記録を打ち立てました。この年はレディー・ガガやセレーナ・ゴメスとのコラボもあり、グループが世界的な存在になった1年でした。
BAD BUNNY x JHAY CORTEZ – DÁKITI
LATIN
プエルトリコのバッド・バニーとジェイ・コルテスによる曲。従来のレゲトンより音数を絞った、ひんやりした質感が新鮮でした。
スペイン語の曲としては初めて、ビルボードのグローバル・チャート2種で同時に1位を獲得。この年のバッド・バニーは、Spotifyで世界で最も再生されたアーティストになりました。
Machine Gun Kelly – bloody valentine
ROCK / POP PUNK
ラッパーとして知られていたマシン・ガン・ケリーが、ポップパンクに全面的に振り切った1曲。プロデュースはblink-182のトラヴィス・バーカーです。
この曲を含むアルバム『Tickets to My Downfall』は全米アルバムチャートで1位を獲得。2000年代のポップパンクが再び聴かれ始める、その入口になった作品でした。
2020年の洋楽シーン総括
2020年は、音楽の届き方が大きく変わった年でした。ライブもフェスもツアーも軒並み中止になり、アーティストは自宅から配信し、MVも人を集めずに撮るしかなくなる。それでもチャートは止まりませんでした。むしろ、家にいる時間が増えたぶん音楽を聴く時間は増えていたのだと思います。
この年を象徴するのがThe Weeknd(ザ・ウィークエンド)の『Blinding Lights』です。ビルボードのシングルチャートでトップ10圏内に1年間居続けるという前例のない記録を作り、後に「Hot 100史上最も成績の良かった曲」に認定されました。80年代のシンセポップを下敷きにした曲が、こんな形で歴史に残るとは誰も思っていなかったはずです。
もうひとつ大きかったのがTikTokの存在です。『Say So』も『Savage』も『Mood』も『death bed』も、火がついたきっかけはTikTokでした。曲を仕掛ける側ではなく、聴く側が短い動画に使うことでヒットが決まる。前年の『Old Town Road』で見えた流れが、この年に完全に定着しました。
英語圏の外からのヒットも当たり前になりました。BTSの『Dynamite』は韓国のアーティストとして初めてビルボードのシングルチャートで1位を獲得し、BLACKPINKもYouTubeの記録を塗り替えています。Bad Bunny(バッド・バニー)はスペイン語のままSpotifyで世界一再生されたアーティストになりました。
外に出られない状況が、作品そのものを変えた例もあります。Taylor Swift(テイラー・スウィフト)が告知の翌日にいきなり発表した『folklore』は、その最たるものでした。一方でDua Lipa(デュア・リパ)は、踊る場所がない年にあえて全編ダンスミュージックのアルバムを作りきっています。
そして、失われたものも大きい年でした。2月にPop Smoke(ポップ・スモーク)が20歳で亡くなり、前年末に亡くなったJuice WRLD(ジュース・ワールド)の遺作もこの年に発表されました。5月のジョージ・フロイド事件をきっかけに広がった抗議運動も、この年の音楽と切り離せません。にぎやかなチャートの裏側で、いろいろなことが起きていた1年でした。




















