2015年の洋楽シーンは、いま振り返っても“豊作の年”でした。この年の6月にはApple Musicがサービスを開始し、音楽の聴き方が“所有”から“ストリーミング”へと大きく傾いた転換点でもあります。EDMから派生したトロピカルハウスが夏を席巻し、その一方で、ファンクやソウルを現代的に鳴らしたポップスや、圧倒的な歌声で世界を黙らせるディーバの帰還もありました。ジャンルの垣根が溶け合い、チャートがどこまでもカラフルだった一年です。
この記事では、そんな2015年を代表する洋楽ヒットを、MV付きで一気におさらいします。大ヒットソングから、主にヨーロッパで盛り上がった曲、そして個人的な愛聴曲まで。当時を知る人は懐かしく、知らない人は“入り口”として楽しんでください。
2015年に世界的にヒットした曲
まずは、国や世代を越えて世界中で鳴り響いた大ヒット曲から。どれも一度は耳にしたことがあるはずの、2015年を象徴するナンバーです。
Mark Ronson – Uptown Funk ft. Bruno Mars
2015年、最も熱かった曲は間違いなくこれ。イギリスのプロデューサー/DJマーク・ロンソンが、ブルーノ・マーズのボーカルを迎えて放ったファンク・リバイバルの決定打です。Billboard Hot 100で14週連続の首位という驚異的なロングランを記録し、街でもクラブでも流れない日はありませんでした。
70〜80年代のファンクやソウルを現代のポップに落とし込んだ質感は、世代を問わず踊れる普遍性そのもの。2016年の第58回グラミー賞では最優秀レコード賞を受賞し、名実ともに“2015年の顔”となりました。
Wiz Khalifa – See You Again ft. Charlie Puth
あの『Uptown Funk』の連続首位を止めたのがこの曲。映画『ワイルド・スピード SKY MISSION』の挿入歌で、撮影中に亡くなった主演ポール・ウォーカーへの追悼として書かれました。ラップを担うのがウィズ・カリファ、ピアノを弾きながら切ないサビを歌うのがチャーリー・プースです。
喪失と友情をまっすぐに歌ったバラードは映画の枠を超えて広がり、一時はYouTubeで世界最多再生を記録するほどの社会現象に。ヒップホップとポップスの垣根を軽やかに越えた一曲です。
Maroon 5 – Sugar
みんな大好きマルーン5。実在の結婚式にサプライズで次々と乱入して演奏するMVが大きな話題になりました。甘く弾むディスコ・ポップは、彼らの“安定してヒットを出し続ける”懐の深さを改めて示した一曲です。
2002年のデビュー当初はほとんど注目されませんでしたが、じわじわと評価を高め、いまや世界屈指のポップバンドに。『Moves Like Jagger』『Payphone』など時代ごとにアプローチを変えながらヒットを重ねてきた柔軟さが魅力です。もっと聴きたい人は、こちらの特集もどうぞ。
The Weeknd – Can’t Feel My Face
2015年はザ・ウィークエンドが一気にスターダムへ駆け上がった年でした。本作はマイケル・ジャクソンを彷彿とさせる、ファンクネス全開のダンス・ポップ。ダークな出自を持つ彼が、ポップの表舞台で堂々と鳴らしてみせた勝負曲です。
同年の『The Hills』も大ヒットし、アルバム『Beauty Behind the Madness』でトップ・アーティストの仲間入り。個性的なヘアスタイルと、甘さと影を併せ持つ歌声で、以降の洋楽シーンを牽引していきます。
Ed Sheeran – Thinking Out Loud
一年を通してチャートに居続けたロングヒット・バラード。アルバム『×(マルティプライ)』からのシングルで、ペアダンスを踊る印象的なMVとともに世界中の結婚式定番ソングになりました。ギター一本の弾き語りから世界の頂点へ——エド・シーランの真骨頂です。
2016年の第58回グラミー賞では最優秀楽曲賞を受賞。『Photograph』も同時期に愛され、彼が“一過性のヒットメーカー”ではないことを証明した年でした。深掘りはこちらの特集で。
Adele – Hello
『Rolling in the Deep』で世界を席巻したアデルが、約4年の沈黙を破って放った復帰曲。過去へ語りかけるような歌詞と、鳥肌ものの歌唱力だけで一切の説明を不要にする圧巻のバラードです。公開直後から爆発的に広まりました。
アルバム『25』は世界的な大記録を打ち立て、2017年の第59回グラミー賞では主要3部門を含む複数部門を制覇。2015年の終わりから2016年にかけて、時代を代表するディーバの帰還を強く印象づけました。
OMI – Cheerleader (Felix Jaehn Remix)
2015年の夏はこれで決まりでした。ジャマイカ出身OMIの楽曲を、ドイツの若手DJフェリックス・イェーンがトロピカルハウス調にリミックスしたことで一気に世界的ヒットに。口笛のようなシンセと軽やかなリズムが、どこまでも夏の空気を運んできます。
海岸線をドライブしながら流したい、多幸感のある一曲。トロピカルハウスがメインストリームへ躍り出た象徴的なヒットでもありました。
Major Lazer & DJ Snake – Lean On (feat. MØ)
個人的に2015年で一番ハマったのがこれ。ディプロ率いるメジャー・レイザーとDJスネイクがタッグを組み、デンマークのシンガーMØを迎えた、まさにグローバル・アンセム。インドで撮影されたカラフルなMVも含め、世界中を巻き込みました。
当時のストリーミング再生記録を塗り替えるほどの大ヒットで、EDM以降のダンスミュージックが“世界共通語”になったことを示した一曲。数年経ってもフロアで鳴れば必ず盛り上がる、色褪せない名曲です。
Ellie Goulding – Love Me Like You Do
話題の映画『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』の主題歌としてヒット。エリー・ゴールディングの伸びやかで芯のあるボーカルが、緊張感のあるドラマティックなサウンドの上で美しく映えます。映画の世界観と一体になって世界的な人気を得ました。
エリー・ゴールディングはイギリス出身のシンガーソングライター。囁くようなファルセットから力強いベルティングまで自在に操る歌唱が魅力で、『Burn』『Anything Could Happen』など幅広いヒットを持ちます。本作は、彼女の表現力が映画のドラマ性と見事に噛み合った一曲です。
Fetty Wap – Trap Queen
当時はまだ無名だったニュージャージー出身のラッパー、フェティ・ワップ。この曲をきっかけに一躍ブレイクし、Billboard Hot 100でも上位に長く居座りました。歌うようにフロウする“メロディック・トラップ”の魅力を、一般リスナーにまで広げた立役者です。
片目という個性的なルックスも印象的。中毒性のある「1738!」のフックは、一度聴くと頭から離れません。
主にヨーロッパでヒットした楽曲
続いては、ヨーロッパを中心に盛り上がった曲を。EDM/ダンスミュージックの新しい才能が次々と頭角を現し、シーンの世代交代を感じさせた楽曲たちです。
Kygo – Firestone ft. Conrad Sewell
2015年に大きくブレイクしたノルウェーのDJ、カイゴ。ピアノの美しいメロディを主役に据えた、彼ならではの“トロピカルハウス”を世界に広めた代表曲です。派手すぎず、それでいて情感豊かなサウンドは、ダンスミュージックの新しい聴き方を提示しました。
コンラッド・スウェルの伸びのあるボーカルとの相性も抜群。同時期の『Stole The Show (feat. Parson James)』と合わせて聴くと、カイゴの世界観がより深く楽しめます。
Martin Garrix feat. Usher – Don’t Look Down
『Animals』で一躍時の人となったオランダの若きDJ、マーティン・ギャリックス。本作ではあのアッシャーを迎え、EDMとポップ/R&Bを橋渡しする新境地を見せました。ストーリー性のあるMVも見応え十分です。
この年はULTRA Japanで来日も果たし、日本での知名度も急上昇。10代にしてシーンの最前線に立った彼の勢いを感じさせる一曲でした。詳しくはこちらの特集で。
Years & Years – Shine
UK出身のシンセポップ・トリオ、イヤーズ&イヤーズ。オリー・アレクサンダーの繊細でソウルフルな歌声と、きらめくエレクトロ・ポップが心地よい一曲です。デビュー・アルバム『Communion』は本国イギリスで初登場1位を記録しました。
この時期の彼らはヒットを連発しており、個人的にもヘビーローテーション。『King』も名曲なので、気に入ったらぜひ続けて聴いてみてください。
Galantis – Runaway (U & I)
スウェーデンのプロデューサー・デュオ、ガランティス。加工されたボーカル・チョップが疾走するサビは、多幸感と切なさが同居する唯一無二の高揚感。EDMのなかでも“泣ける”一曲として、いま聴いても胸が高鳴ります。北欧勢の充実を象徴するヒットでした。
ガランティスはBloodshyとStyle of Eyeによる二人組で、うさぎをモチーフにしたロゴでも知られます。『Peanut Butter Jelly』『No Money』などアッパーで多幸感あふれる楽曲を次々に発表し、“キャッチーで少し切ないEDM”という個性を確立しました。
個人的に好きな曲
最後は、チャートの大小に関わらず、筆者がよく聴いていたお気に入りを。2015年の“もう一つの魅力”として楽しんでもらえたらうれしいです。
Calvin Harris & Disciples – How Deep Is Your Love
ヒットメーカー、カルヴィン・ハリスがUKのユニット、ディサイプルズと組んだディープハウス寄りの一曲。派手に盛り上げるのではなく、洗練されたグルーヴでじっくり踊らせる大人の質感がたまりません。夜のドライブにもよく似合います。
数々のディーバやアーティストを手掛けてきた彼のプロデュース手腕は、こちらの特集で詳しく紹介しています。
Omarion Ft. Chris Brown & Jhene Aiko – Post To Be
真っ白な背景だけで、ここまでスタイリッシュに見せられるのか——と唸らされるMVが印象的なR&Bナンバー。オマリオンにクリス・ブラウン、ジェネイ・アイコという豪華な組み合わせで、ミニマルながらフックの効いたトラックに仕上がっています。
ジェネイ・アイコが放つ“隠し味”のようなバースも聴きどころ。派手さより洗練で聴かせる、2015年R&Bの好例です。
WALK THE MOON – Shut Up and Dance
アメリカのバンド、ウォーク・ザ・ムーンによる80年代テイスト全開のダンス・ロック。少しダサい(?)くらいのキラキラ感が逆に最高で、イントロが鳴った瞬間にノリノリになれる多幸感がクセになります。パーティーやドライブのプレイリストに欠かせない一曲です。
ロックバンドがシンセポップの意匠を纏って大衆的ヒットを飛ばしたという点でも、ジャンルが溶け合った2015年らしい成功例と言えます。
まとめ
こうして並べてみると、2015年は本当に豊作の年でした。ファンク・リバイバル、ディーバの帰還、トロピカルハウスの台頭、そしてストリーミングの普及——ポップスの地図が塗り替わっていく瞬間が、ヒット曲のなかにぎゅっと詰まっています。
まず1曲から聴くなら、やはり時代の象徴『Uptown Funk』から。踊れる一曲が欲しいなら『Lean On』、じっくり浸りたいなら『Hello』や『Thinking Out Loud』がおすすめです。個人的には、Years & Years と Major Lazer & DJ Snake の『Lean On』がとにかくキていました。
気に入った曲があれば、ぜひアーティストの他の作品も掘ってみてください。あなたの“2015年の1曲”が見つかれば幸いです。



